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「ハァッハァッハァッ」

○○は全速力で走っていた。
喉がカラカラに乾いて痛かったが、それすら気にしない様に走り続けていた。

「っ着いた!」

前回も思った大きなクジラを模した可愛らしいビル。
今回は躊躇する事無く中に入る。

相変わらず受付嬢は美しかった。

「ーー会社の□□と申します」

○○は息を調えそう受付嬢に話しかける。

「はい、お待ちしておりました。38階会議室でございます」

何事も無い様ににこりと笑った。

「……?私の前に他の者が来ませんでしたか?」

「いいえ」

○○の言葉に受付嬢は不思議そうに首を左右に振った。

「そ、そう……ですか」

○○も不思議そうに首を傾け、お辞儀をしてエレベータへ向かった。





ーーポーン




エレベータを降りると見た顔が出迎えた。

「サッチさん!」

○○はリーゼントを目にして声をかける。

「おや!○○ちゃんじゃん!」

サッチはにこにこと笑いかける。

「あの!ここにーー会社の人来ませんでしたか?」

○○は慌てた様に聞く。

「え?それって○○ちゃんでしょ?」

サッチは不思議そうに聞く。

「いや、その、私以外に」

「んー?いや、来てないと思うけど……。イゾウ知ってる?」

サッチはうーんと考えながらイゾウを振り返る。

「いや。知らねェなァ」

男性らしからぬ色気を出してイゾウは首を左右に振った。

「そう……ですか」

○○は「私の方が先に着いたのかしら?」とぼそぼそと呟いた。

「それより、マルコ待たせて良いのか?」

サッチが廊下の奥を指差す。

「そ、そうでした。では、行ってまいります」

○○はサッチとイゾウに頭を下げ、会議室へと足を進めた。

「へェ、あれが○○ちゃんね」

イゾウが去っていく○○の背中を見た。

「なかなか面白い子だとは思うよ」

サッチは楽しそうに笑った。








ーーコンコン




「失礼します」

「どうぞい」

ドア越しのくぐもったマルコの声に胸をときめかせながらドアを開く。

「よく来たねい」

マルコは自分と向い合わせの席を進める。

○○はそれに素直に従った。

「じゃあ、早速」

「あの、マルコさん」

「ん?」

マルコの声を遮り、○○は困った顔をする。

「前に話した事ありますよね?シャンクスさんの所と契約結べなかった理由」

「ん?あァ、確か使えないクズ上司がどうたら、こうたらだったかよい?」

マルコは興味無さそうに首の後ろに手を置く。

「えぇ。その上司……ネズミって言うんですけど、その人が私の代わりにここへ来るらしいんですよ」

○○はすまなそうに声を出す。

「そうかい?来ちゃいないが、何かやらかす気なら容赦はしないよい」

マルコはニヤリと笑う。

(…………悪い顔だ)

○○はぞくりと体を震わせる。

「き、来てないなら、良いんです!あ、これ、契約書。目を通していただけますか?」

○○は鞄から丁寧に書類を取り出す。

マルコはそれにきちんと目を通す。

「確かに」

「じゃあ!」

○○は目を輝かせてマルコを見る。

「行くよい」

マルコはソファーから立ち上がる。

「へ?どこへ?」

○○は不思議そうにマルコを目で追う。

「ここの天辺見せてやるよい」

ニヤリとまたマルコは悪い笑いをした。

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