17
「あァ!!!あんたか!知ってるぞ!」
男は鼻血を垂らしたままマルコを見た。
「……」
マルコは無言で男を見下げた。
「お前も俺と同じじゃねーか!」
男はニヤニヤと笑う。
「……?」
○○は男の言っている意味が解らずに隣のマルコを見上げた。
「こいつな、俺と同じで、ずっと君を見てたんだぜ!!」
男はニヤニヤとマルコを指差す。
「……ど、どう言う事?」
○○は混乱して今度は男を見る。
「君は俺がストーカーだと思ってるんだろ?俺は純粋に君を見てた。そんで、そいつも君を」
「…………え」
再び○○がマルコを見上げる。
マルコはゆっくり煙草に火をつけて、深く吸い込んだ。
「言いたい事はそれだけかよい」
マルコは紫煙を吐き出す。
「あはははは!開き直りやがったよ!」
俺は高らかに笑った。
「お前は不法侵入及び準強姦。俺とは雲泥の差さだねい」
マルコは無表情のまま言う。
「っ!…………同じだろ?」
男はニヤリと笑う。
「お前も酔った彼女を」
「……」
「っ!!」
男の言葉にマルコは無言で近付き、右手で殴る。
「ま、マルコさん!!!待って!!」
無表情で殴り続けるマルコの腕を止める。
「……」
マルコは冷たい表情のまま、殴るのを止める。
「……あの」
○○はマルコが男を掴んだままなので、そっと男に近付いた。
「何故見ているだけだったんですか?」
○○の言葉はどちらに向けられた物だったのか、
「…………自信が無かった……」
男は血だらけの顔でそう言った。
「でも、ちゃんと伝えなきゃ伝わらないですよ?」
○○は怖い気持ちを押さえて言う。
「…………伝えて君は受け入れるかい?」
その言葉にマルコの体がびくりと震える。
「分からない。言っても貰わないと」
○○は静かに声を出した。
「俺は君が好きなんだ」
「………………ごめんなさい。私は、好きな人がいます」
「…………そうか」
俺は小さく笑った。
「失恋は辛いな。これが嫌なんだ」
俺は涙を流す。
「…………それがなきゃ、人間成長なんてしないです。成長しなきゃ、好きになって貰えないです」
私も、そうでした、と○○は辛抱強く言葉にした。
「…………悪かったな」
男はフラフラと立ち上がる。
「警察に行きます。君にも迷惑がかかるかもしれないけど。それなら君も俺を忘れないだろ?」
男はニヤリと笑った。
「…………分かりました」
○○はその顔に少し恐怖を感じる。
しかし、マルコが横にいるのを感じて気を強く持ち、頷いた。
男が出て行った玄関を○○は見送った。
「……」
マルコは黙ったままだった。
「……マルコさん」
○○の声にぴくりと肩を震わせる。
「……あの、行きましょう?」
「っ?」
○○の言葉にマルコは驚いて振り返る。
「だって、マルコさんが窓割っちゃったから」
○○はクスクスと笑いながらベランダの方をチラリと見た。
「……よい」
マルコは静かに立ち上がる。
車でマルコのマンションへ向かう。
「あの」
静かな車内に○○の声が響く。
「なんだい?」
「部屋に着いたら聞きたい事があります」
「…………わかった」
マルコは頷いた。
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