16
「で?どれだよい」
マルコは前に送った場所で車を停めた。
マルコは○○の家を知らないのだ。
「あ!えっと、その先の交差点を」
○○は慌てて説明をする。
「教えて良いのかい?」
クスリとマルコは笑う。
「はい、もちろん」
○○は照れを隠すために頷いた。
「あれかい?」
「はい。そこが来客用駐車場で」
「よい」
マルコが言われた駐車場に車を停める。
「じゃあ、ちょっと行ってきます」
○○は車を出る。
「遅かったら見に行くよい」
マルコは窓を開けて確認する。
「はい、宜しくお願いしますね」
○○はマルコににこりと笑いかけ、速足で歩いた。
二階の自分の部屋に入り、資料を持つ。
それと、下着や着替えを多目に鞄につめる。
「よし」
○○が玄関に向かうとコンコンとノックされる。
「マルコさん?」
ガチャリとドアを開けると知らない男が立っていた。
「やっと帰って来たね」
ニヤリとその男は笑った。
「…………」
○○は知らない男に驚いて声を出せないでいる。
「ふふ、嬉しいかい?俺に会えて」
男は一歩部屋に入って来た。
「っ!入らないで!出ていって!!貴方があの写真?!」
○○はハッと我に返り、大声を出す。
「そうだよ?ふふ、気に入ってくれた?」
男は嬉しそうにもう一歩入る。
「誰が!」
○○は携帯を取り出し、マルコにダイアルをする。
「マルコさん!」
『どうしたよい』
「助けっ」
ーーぷっプープー
男は携帯を取り上げ、通話を切る。玄関の中まで入ると後ろ手にドアを閉め、鍵をかけた。
「っ!な、なにするの?!」
「俺は君を愛してるよ」
男は虚ろな目で○○に手を伸ばす。
○○は急いでベランダに逃げようとくるりと踵を返す。
「逃げないで」
すぐに腕を捕まえられ、倒される。
「っ!!」
顎と腹に痛みを覚える。
「大丈夫。俺は君に優しく出来るよ」
ふふふと男は笑った。
「っ!なにが!!この時点で優しくなんてないじゃない!」
○○は倒されながらも思いきり肩越しに睨み付ける。
「君が逃げるからだよ」
クスクスと男は笑った。
ーーゴンゴン!!!
ドアが乱暴にノックされる。
「○○!どうしたよい?」
少し焦りを感じさせるマルコの声がする。
「マルコさん!むぐ!」
声を出すと男は○○の口を手で塞ぐ。
「誰だ?!」
男はドアに向かって叫ぶ。
「テメェこそ誰だよい」
マルコの地を這う様な声を出した。
「俺は○○の彼氏だ」
男は叫ぶ。
「それはおかしいよい。俺もそうだ」
マルコはガチャガチャとドアのぶを回す。
「痛っ!!!」
「マルコさん!助けて!!!」
「っのぉっ!!」
「キャッ!!!」
○○が思いきり男の指を噛み、叫ぶ。
男は怒りに任せ、○○の髪を掴む。
「○○!!!」
マルコの焦った声がドアの向こうからする。
「大丈夫。ちゃんと愛してやるよ」
ニヤニヤと男は笑った。
「っ!!嫌ぁぁ!!!」
○○が叫ぶ。
何で、こんなにも痛い思いをしなくてはいけないの。
怖い、痛い、嫌だ!
ーーガシャーン
「テメェ、その汚い手を退けろ」
硝子の割れる音と共に、マルコがベランダから入って来る。
「っなっ!おま!」
男は焦りながらマルコを見る。
「早く退け!」
ガツンとマルコは男を蹴り飛ばし、○○から退かせる。
「がはっ!」
「マルコ……さん」
○○は少しマルコにも恐怖を感じた。
(怖い……)
○○は殺気を孕んだマルコの姿を初めて見た。
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