08
お米をとぎ、水を入れ、先に炊く。
煮干しで出汁を取る。
油揚げを熱湯にくぐらせ、味付けをし、煮込む。
ひじきを暖め直し、皿に入れてあら熱を取る。
肉にシソ、海苔、梅肉を乗せ包む。
酒、砂糖、みりん、醤油で味付ける。
煮えた油揚げを皿に入れ、熱を冷ます。
レタスを洗い、水気を切る。
「…………まだ出来ませんよ?」
始めから近くで○○の手元をじっと見てくるマルコを怪訝そうに振り返る。
「手際良いねい」
マルコが声を掛けられた事に良い気になり、更に近付く。
「ありがとうございます」
○○はご飯がもうすぐ炊けるのを確認するとコップに酢と砂糖と少しの塩を入れかき混ぜる。
ご飯が炊き上がると、寿司桶など無いので、ボールに炊きたてのご飯を入れ、寿司酢を入れる。
木杓文字を持ち、マルコを振り返る。
「うちわか扇子か……扇ぐ物ありますか?」
「あァ、待ってろよい」
マルコはそう言うと「白髭夏祭り」と書かれた団扇を持ってきた。
「扇いでください」
○○がご飯を木杓文字で切るように混ぜる。
「よい」
それをマルコが扇ぐ。
「気合いが足りません!」
「よい!」
マルコは強めに扇ぐ。
「うん、良い感じ」
○○は少し味見をする。
「少し扇いでいてください」
「よい」
○○はあら熱を取ったひじきを取る。
「ありがとうございます」
○○が礼を言うとご飯にひじきを混ぜ込む。
「混ぜご飯かい?」
「いえいえ、もう一手間」
○○は油揚げの中にご飯を詰める。
「お稲荷さんかい」
「はい」
○○はお稲荷さんを作る。
「はい!出来ました!」
○○は出来上がった、お稲荷さん、肉のシソ巻き、サラダ、味噌汁を並べる。
「今日も豪華だよい」
マルコは感心したように頷いた。
「ありがとうございます」
○○は素直に礼を言う。
「頂きます。うん、旨いねい」
マルコは満足そうにお稲荷さんを食べる。
「良かったです」
作るからには美味しい物を作りたい。○○はマルコの言葉に嬉しそうに笑った。
「この肉はビールが飲みたくなるよい」
梅の酸っぱさが食欲をそそる。
「飲みます?」
「送れなくなるよい」
「大丈夫ですよ?」
○○は一人で帰れると言う。
「……泊まってくかい?」
マルコが真剣な顔をする。
「………………お酒は止めましょう」
○○は小さくため息をついた。
「残念だよい」
マルコはニヤリと笑うと味噌汁を飲む。
(……冗談か)
○○は自分が一瞬残念がる気持ちを全否定する。
(いや、当たり前)
○○は眉間にシワを寄せた。
食洗機をまた起動させ、○○は帰り支度を始める。
「……帰るのかい?」
マルコが聞く。
「もちろん。着替えも無いですし」
○○が冗談めかして言う。
「……買ってやろうかい?」
マルコがニヤリと笑う。
「…………いいです」
○○は玄関へ向かう。
「○○」
マルコの声に振り返る。
「んん!」
マルコは手で○○の顎をくいっと上げ、口付ける。
「なっ!ん」
逃げようとする○○の腰に手を回し強く抱き寄せる。
「やっ!!」
○○はドンッとマルコを押す。
マルコはあっさりと離れる。
「なっ!!なな!!」
○○は顔を真っ赤にしてマルコを睨む。
「我慢しろって方が鬼だねい」
マルコは平然と言う。
「っ!!!」
○○はポロポロと子供のように涙を流す。
「……」
「本気じゃないなら止めて!」
○○は叫んで玄関へ走る。
「……裏切るのはいつも女だよい」
マルコは静かに呟いた。
ーーパタン
静かに玄関のドアが閉まった。
「お!マルコ、おはよう!」
「…………よい」
「元気ねーな!」
「…………よい」
「こりゃダメだ!」
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