表側

1ヶ月に一度の実家の掃除に来た日。

「あれ?」

蓮はそれを郵便受けで見付けた。
普段人の住まないそこは郵便などはない。だが癖で郵便受けを覗いたのだ。

「同窓会のお知らせ?」

蓮は葉書を不思議そうに眺めた。







「同窓会のお知らせ?来たわよ」

夫同士、妻同士仲の良いシャンクス夫婦とベックマン夫婦は良く夕飯を共にする。

素子が葉書を見ながら頷いた。

「そうなんだ」

蓮は不思議そうに葉書を受けとる。

「何だ?同窓会があるのか?」

シャンクスがビールを片手に蓮の手から葉書を取る。

「ふーん。行くのか?」

シャンクスは舐めるように葉書の文面に目を通した。

「行くよね?」

蓮が素子に身を乗り出した。

「もちろん、行かない」

「何でだ?」

きっぱりと言う素子にベックマンが思わず声を出した。

「だって、私が行ったら場の雰囲気が悪くなるもの」

何でもない様に素子は言った。

「そんな事ないよー」

蓮は力強く否定する。

「何でそう思うんだ?」

シャンクスは不思議そうに素子を見る。

「私、あの頃が一番荒れてたので。髪も染めてたし、ピアスも開けてたし、煙草も吸ってました」

素子は事も無げに言う。

「そうそう!あの頃も可愛かったよねー!」

「……それはない」

素子はため息混じりに否定した。

「今は吸わないんだな」

シャンクスはベックマンの煙草をちらりと見てから聞く。

「はい。サッチに禁止令出されて。まぁ、挑みましたけど返り討ちにあいました」

拳を握って殴る真似をした。

「まぁ、白ひげの時は色々ありましたけど、自分が世間に顔向けできるのはオヤジやサッチのお陰です」

素子は、懐かしむ様に言葉を重ねた。

「妬けるねー、ベック?」

ニヤニヤと笑いながらシャンクスはベックマンを見た。

「そんな事はない。俺はどんな素子でも愛してやるさ」

ベックマンはニヤリと笑った。

「さすが愛に生きる男だよ」

シャンクスがだっはっはっ!と笑い飛ばした。





「で?行こうよ!私、久しぶりだし、一人で行くのちょっと気が引ける」

蓮が子供を寝かし付けてから再びダイニングに現れた。

「……そうよね、私でさえついこの前まで行方知れずだったものね」

素子はうーんと考える。

「俺からも頼むよ。蓮を一人で外に出すのは心配だからな」

シャンクスはクスリと笑うとビールを煽る。

「……息子さんはどうする気ですか?」

素子はシャンクスをじっと見返した。

「あ、そうだよね……」

蓮は言葉に詰まり、残念そうに笑った。

「あいつの事なら気にするな!ちゃんと俺が見てるから」

シャンクスはにかりと笑った。

「…………わかりました。そこまで言うのであれば一緒に行かせて頂きます」

「ありがとうー!」

素子の言葉に蓮は嬉しそうに笑った。








同窓会で久し振りの再会に盛り上がる店内。人が集まりだしがやがやと賑やかであった。


ーーガラッ


扉が開き、皆の顔がそちらに向かう。
「誰が来たのか?」と期待する顔が入り口へと向く。

シーンと静まり返る店内。

男達は美しい女に一瞬言葉を無くし、女達は「誰?」と言う顔をした。

「こんばんはー」

店内を静まり返らせた本人素子の後ろから蓮がそう口を開いた。

「え?あ!蓮!」

「あ!本当だ!」

「もー!この子ったらいつも返信葉書出さなくて!!全く!!」

凍った店内を溶かし、女達があっと言う間に蓮を取り囲んだ。

「……って事は素子……さん?」

蓮を取り囲んでいた一人が恐る恐ると言う声で振り返る。

「……えぇ」

素子は美しい顔をにこりと緩ませた。

「っ!!お酒!!素子さんにお酒!!」

「ここ空いてるよー!」

「お前抜け駆けするんじゃねぇ!!ここ空いてるよ!」

「お前こそ!」

男達がギャーギャーと素子を取り囲んだ。

「……やれやれ、全くこれだから男は……」

女達はクスクスと笑いながら呆れていた。





「あ!先生ー!」

「遅いー!」

アルコールも進み、盛り上がった所に元の担任がやって来た。

「おや、これはこれは、懐かしいお二方」

「お久しぶりです」

「ご無沙汰しております」

蓮と素子は担任に頭を下げた。

「お久しぶり」

担任もにこにこと笑った。

「いやー、蓮さんの連絡が取れないって言われてからずいぶん経ちますね」

担任はビールを受け取りながら聞く。

「……すみません。色々ありましたが、今では結婚もして幸せです」

蓮はふわりと笑った。

「そうですか!それは良かったですね」

担任も嬉しそうに笑った。

「えー!2人共結婚してるの?!」

「素子さんも?!」

「ざ、残念だ!」

「今日は飲むぞー!」

「…………全く……」








幸せの時間、同窓会の時間









「楽しかった!」

「ふふ、社長と副社長に感謝しないとね」

「ふふ、うん!」

「……まぁ、何かはやってたみたいだけどね」

「え?」

[ 1/3 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -