02
翌日から毎日の様に来ていたドフラミンゴは来なかった。
シエルはその事にがっかりとする自分に悶々としながら、歌を歌い続けていた。
そんなある日の出来事。
「いらっしゃい!!……ませ」
店主の焦った声にシエルが振り返るとそこにはドフラミンゴが立っていた。
ドフラミンゴは店主の言葉を無視する様にシエルの目の前までやって来た。
「来い」
恐怖と嬉しさが入り交じる感情でドフラミンゴを見上げるとただ一言そう言われた。
「え?きゃっ!!!」
シエルが呆然と見上げているとドフラミンゴがシエルを担ぎ上げた。
「行くぜ」
ドフラミンゴがニヤリと笑うとそのまま店の外に出た。
助けを求め店主に目を向けたがサッと目を反らされた。
「ど、どこへ?!」
「舌噛むぜ?」
ドフラミンゴはそれだけ言うと島の外へと歩き出す。
「っ!!と、飛んでる?!」
ぴょーん、ぴょーんと海を飛んだ。
「こ、ここは?」
シエルは下ろされた小さな島でキョロリと辺りを見回した。
運動場程の広さの島には小屋と呼ぶには豪華な家が建ち、その先には煙がもくもくとしていた。
「俺の島だ」
ドフラミンゴはそう言うと煙の方へと移動する。
シエルは迷いながらもドフラミンゴの後に続いた。
「湯気?」
ポツリと呟く。煙だと思っていた物はどうやら湯気で、その下にな豪奢な作りの露天風呂があった。
「お前と入ろうと思ってな。用意させた」
「え?は?」
驚きにドフラミンゴを見上げるとサングラスがこちらを向いていた。
「船はない。入るしかお前に道はないぜ」
ニヤリと笑うドフラミンゴにシエルの背中を冷や汗が流れた。
「いつでも入って来い」
ドフラミンゴはさっさと露天風呂へ入って行った。
小さな島にある家、露天風呂はシエルと入る為だけにドフラミンゴが作らせたものだった。
あの日からドフラミンゴが来なかったのはこれを作らせる為だったのだ。
シエルは島を見渡すが船はなく、 もちろん他の島も見えない。ここから出るにはドフラミンゴに頼るしかないのだ。
「……何でこんな事に……」
シエルは意を決すると自分の服に手をかけた。
「何だ?これは」
ドフラミンゴは不服そうにシエルの体に巻き付いた大きなバスタオルを指差した。
「だ、ダメとは言われてませんし、さすがにこれなしでは無理です!」
シエルは顔を真っ赤にして抵抗した。
「まぁ、良い」
「きゃっ!!!」
ドフラミンゴに手を引っ張られ、シエルは露天風呂の中へと引き込まれた。
「柔らかいな」
「っ!!」
ドフラミンゴの手がシエルの体に這う。
「嫌か?」
「……」
ドフラミンゴの言葉に無意識に首を左右に振るとドフラミンゴは満足したようにシエルを膝の上に乗せると満足そうに背中から抱き締めた。
「なぁ」
「は、はい」
しばらく無言でくっついていが、不意にドフラミンゴが口を開く。
「話した事は数回しかないが俺がお前を愛していると言ったらおかしいか?」
ドフラミンゴの言葉にシエルは反射的に首を左右に振った。
「……嬉しく思います」
シエルは小さな声で答えた。
「フッフッフッ!赤いぜ」
「っ!!」
つつーっとシエルの肩から背中にかけてドフラミンゴが指を滑らせた。
「もう、酒場に返す気はない」
「……はい」
ドフラミンゴの言葉は何故かすんなりとシエルの体に染み込んで行った。
良い風呂の日初めて会った日からお互いに引かれていた。
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