03

宿屋に帰り着き、白ひげ一行は宴会場に向かっていた。

「何かさ、エース機嫌悪くねェ?」

ほかほかと湯気の立つサッチがこそりと要に聞く。

「あ、……えーっと」

2人でデートを楽しんでいたがすぐに邪魔が入ってしまったのだ。その事を要は言えずに苦笑した。

「何だよ、温泉入らなかったのか?気持ち良かったぞ?な!」

「……そうだね」

上機嫌のサッチに対して愛子はぐったりと相槌を打った。

後ろの方で真子が「大丈夫?」と愛子に声をかけていた。

「入ったよ!入ったさ!せっかく家族風呂予約して!!」

エースはサッチを睨み上げた。

「な、何よ?この子?要ちゃんと入ったんだろ?」

サッチは頭の上に「???」を浮かべた。

「あ、いえ、私は」

要は慌てて首を振る。

「えー?!じゃあ一人で入ったの?寂しー奴!」

サッチはケラケラと笑う。

「違う……」

エースは小さく力なく笑った。

「じゃあ」

「グラララ!!」

サッチが声を出そうとしたら、大きな声が襖の向こうから聞こえた。

「お、親父は先に来てたかよい」

マルコがそう言いながら宴会場の入り口を開けた。


「よう!遅かったな!!」

出迎えたのは白ひげだけではなかった。

「っ!!あ、赤髪?!テメェ!!なんでここに?!」

マルコは驚きに声を荒げた。

「何でって、俺達も社員旅行だ」

シャンクスはニカリと笑った。








遡ること数時間前。
白ひげ一行同様に赤髪一行も幹部社員旅行で同じ宿に来ていた。

「おー!広いな!」

「なァ、ルフィ!探検行こうぜ!!」

「おう!」

「おー、気を付けて行ってこいよー!」

「「はーい!」」

ヤソップの言葉にウソップとルフィが返事を返すと2人は走り出した。

赤髪一行はシャンクス夫婦と小さな子供一人。ベックマン夫婦、ヤソップ親子とルフィ、ルゥなどが来ていた。



「おい!ウソップ!あっち煙スゲー!!」

「行くぞ!ルフィ!!」

「おゥ!!!」

ハムスターの様な頬に両手には沢山の温泉饅頭。そんな2人はすぐにある人を見付けた。

「あ!エース?!」

「ルフィ?!」

声をかけられエースは驚いて振り返る。

「あー!要もいたのか!!あれ?顔赤いぞ!」

ルフィは無遠慮に2人に近付いた。

「おい!ルフィ!邪魔するのはまずいぞ!」

ウソップが空気を読みルフィを止める。

「あー!要!エースの帽子かぶってんだ?」

ルフィは不思議そうに首をかしげた。

「……ルフィ、兄ちゃん忙しいから向こうに行ってなさい」

エースは肩を落としながらルフィに言う。

「えー!なら、要!遊ぼうぜ!!」

「ウオイ!!!」

ルフィが要の手を引くのを見てウソップが止めた。

「え?え?!えー?!」

要がルフィの力に勝てるはずもなく、エースは諦めた様にルフィについて行く。



そして、エースが予約していた家族風呂にもエースとルフィとウソップと言う男だけで楽しんだのだ。





そして、宴会場手前で

「あ!え?オヤジ!!」

素子が白ひげを見付けて嬉しそうに抱き付いた。

「グラララ!!素子じゃねェか!何してるんだ?!」

白ひげも上機嫌で素子の頭を撫でた。

「社員旅行なの!」

ほら!と言う素子が振り返ると笑顔のシャンクス達がいた。

「おう、小僧供!!いっちょ前に社員旅行とは!」

ニヤリと笑う白ひげと

「あァ、俺達もたまには、な」

ニヤリと笑うシャンクスとの間に不穏な空気が流れる。

「あ、あの」

そんな不穏な空気を感じてか、知らずか幸子が白ひげの前に出てきた。

「お前さんは確か……」

白ひげは幸子を見た後、素子に視線を戻した。

「そう、私の仲人と言うか付き添いをしてくれた親友の幸子」

素子はにこりと白ひげに紹介をした。

「ご挨拶が遅れまして申し訳ありません。今はシャンクスの妻をしております」

幸子は、穏やかな笑顔で白ひげを見上げた。

「ライバルと世の中では言われる俺に挨拶か?」

白ひげはニヤリと笑った。

「いえ。以前、私の両親の葬式などの際はお世話になったと素子から聞きまして、ありがとうございました」

幸子は深く頭を下げた。

「……なるほど」

白ひげは数秒思いにふけると、全てを理解した顔をした。

「あれは素子とサッチがやった事だ。俺は顔を出しただけだ。だが」

白ひげは大きな手を幸子の頭上へと差し出す。
シャンクスとベックマンの間に緊張が走ったが、素子は穏やかにそれを見つめた。

「お前さんも頑張ったんだな。俺の馬鹿娘が曲がらなかったのはお前のお陰なのだろ?」

幸子の頭を優しく撫でる白ひげ。驚いて顔を上げると幸子の目には白ひげの穏やかな笑顔がそこにあった。

「素子が私を嫌わなかったのは貴方のお陰なんですね……。ありがとうございます」

幸子はツンとする鼻に力をいれてにこりと笑った。

「お前さんもなかなか芯の通った女のようだな!グラララ!!!」

白ひげは高らかに笑った。








「それで、宴会場も隣同士みてェだったから、襖開いて貰った。たまには敵と合同宴会ってのも良いだろ?」

だっはっはっ!とすでに出来上がってるシャンクスが笑った。

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