02
「よーし!まずは探検だな!」
宿屋に着き、荷物を置くとエースは楽しそうに笑った。
「え?良いの?勝手に出て」
要は驚きながらエースを見上げる。
「おう!社員旅行って言っても夜の宴会ぐらいだからな、一緒にするの。もう飲んでる奴もいるし、風呂に入ってる奴もいるからな」
エースは肩掛けの鞄を持ち、いつものテンガロンハットをかぶる。
「じゃあ、お土産とかみたい!温泉地だもんね!」
要も小さな鞄に携帯と財布とカメラを持って立ち上がった。
「お饅頭いかがー!」
「これもどう?!」
「お!兄ちゃん良い食いっぷりだな!!」
温泉街を歩くと名物の饅頭の試食が次々とエースの前にやって来た。
「これもうめー!!」
エースはハムスターの様に頬を膨らませながら饅頭を詰め込む。
「あ!私これが良い!家に買って行こう!」
要は茶饅頭を食べながら言う。
「じゃあ、おばちゃん!これ5箱!」
「はい!ありがとう!!」
店員は嬉しそうに袋に5箱の茶饅頭を入れた。
「ほい」
エースは金を払うと要に袋を見せる。
「え?お金!」
要は慌てて財布を取り出す。
「これは俺から要ん家へのお土産な」
エースは少し照れた様に笑うとそのまま袋を下げた。どうやら自分で持つつもりらしい。
「でも、悪いよ」
要は迷いながら声を出す。
「もうすぐ俺の父ちゃんと母ちゃんになるんだから気にするな」
「っ!!う、うん!ありがとう!」
エースの気持ちを嬉しく思った要は再びエースと手を繋ぐとにこりと笑った。
「そう言えばさ」
要と手を繋ぎながらエースはポツリと呟いた。
「その格好」
「え?あ!ど、どうかな?」
要はこの日の為に用意したニットのワンピースだった。
母親に今日の事を話したら「将来の旦那様に恥はかかせられない!」と2人で買いに行ったのだ。
「良いな」
エースは繋いだ手を離すとワンピースの肩を引っ張った。
「ちょ、ちょっとエース?!」
要は慌ててエースの手を離そうとする。
「何て言うかエロイな」
「は、は?!」
耳元でするエースの声に要は慌てる。
「何て言うか、普通のワンピよりエロイ。これ脱がせるの楽しみだな」
ニヤリと笑うエースの顔に要は真っ赤になる。
「なっ?!し、しないよ!」
「は?」
エースがキョトンとした。
「当たり前でしょ!」
「何で?部屋違うから大丈夫だろ」
むきになり否定する要にエースはムッとして返す。
「だ、ダメだよ!いくら部屋が違うからって知り合いがいる所ではダメ!」
要は赤い顔で首を横に激しく振った。
「大丈夫だって!他の奴だって宜しくやってるよ!サッチとかマルコとか」
エースの言葉に前に見てしまったマルコと真子のキスシーンを思い出してしまった要。
「顔真っ赤だなー。何想像してるんだよ?やらしー」
エースは要の肩を抱くと耳元でクスクスと笑った。
「っ!!え、エースの馬鹿!!」
要は茹で蛸の様な顔でエースを睨んだ。
「あはは!スゲー顔」
エースはふと、真面目な顔になり要に顔を近付けた。
「だ、ダメだよ!こんな人通りの多い所で!」
エースの行動に慌てて要はエースから距離を置く。
観光地の休日は実に人が多かった。
「……」
エースは要の手を引き、無言で影に隠れた。
「……え、エース」
「少し黙っとけ」
不安そうな要にテンガロンハットを被せるとエースは要に唇を重ねた。
[ 2/6 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]