01
「要、5000円出せ」
「は、はい?」
突然エースが要のいる教室まで入ってくるとそう言って手を出した。
「悪いようにはしねェ!」
エースはにかりと笑った。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!凄い悪徳商法の様だけど?理由ぐらい聞きなさい!5000円よ?5000円!!」
要が鞄から財布を出すのを見て友人が止めた。
「あァ、今度会社で社員旅行があるんだと!家族も連れていって良いって言うからさ!」
エースは友人と要に説明する。
「へぇ!良いじゃん!行ってきなよ!」
ニヤニヤと止めていた友人が今度は進めた。
「か、家族……」
「婚約してるから良いとよ」
エースはにかりと笑った。
「あらー!お熱い事!良かったわねぇ、要!」
クスクスと笑う友人に赤くなりつつ要はエースに5000円を渡した。
そして、社員旅行の日。
「あ!マルコ先生と真子さん!」
要は知っている顔を見てホッとして近付いた。
「おう、要さん。エースはまだかよい?」
マルコは眠たそうな目で振り返る。
「はい、今向かってるから先に集合場所まで行けと」
要は少し緊張気味に声を出した。
「全く、あいつは……」
マルコは呆れながらため息をつく。
「おーい!要!!マルコー!!」
遠くから大きな声がした。
「エース!」
要は嬉しそうに振り返るとエースに駆け寄った。
「悪かった!ルフィの奴も出かけるとかでぐだぐだした!」
「っ!!ちょ、エース!!」
エースは喋りながら要を抱き寄せた。
「公衆の面前でイチャ付いてねェで、とっとと点呼に知らせろい!!」
マルコが軽く蹴りを入れながらエースを焚き付ける。
「へー、へー!」
エースは口を尖らせると要を離し、幹事の元へ急ぐ。
「エース遅いぞ!これで集合だな!じゃあ、バスに乗れ!」
幹事らしいラクヨウが叫ぶ。
「ねぇ、エース」
「ん?」
「これで全員?」
要はこそこそとエースに聞く。
「あァ、社員旅行っても、幹部だけだし。その中でも半分だ」
エースは説明するように声を出す。
「幹部?」
「あァ。社長兼一番支部のマルコから八番支部のナミュールまでな」
エースが一人一人指で指しながら説明をする。
「え?エースってバイトでしょ?」
要は混乱しながら聞く。
「おう!バイトだけど二番支部長だからな!」
エースはニヤリと笑った。
「……はぁ……」
要は目を瞬かせた。
バスに乗り込むとエースがサッチを見る。
「なァ、サッチ」
「あん?」
「荷物でかくね?一泊だろ?」
エースは大きな鞄を指差した。
「あァ、これ?」
サッチはニヤリと笑うと鞄を開けた。
「んー!んー!!」
中から女が縛られ、猿ぐつわをされた姿で出てきた。
「いやー!ごめんね!愛子ちゃん!苦しかった?」
サッチは笑いながら愛子を鞄から出した。
「え?愛子さん?」
真子はギョッとした顔をした。
「テメェ!!何してる?!サッチ!!!」
マルコまでも焦るように声を出した。
マルコの声に何だ何だと走り出した車内の目がサッチに集まった。
「だってさー!『私は16支部だから一緒に行けないね!』とかほざくんだぞ?」
サッチは拗ねたように声を出す。
「イゾウが愛子を幹事にしてたからな」
ラクヨウがサッチに笑いながら言う。
「でもさー!皆嫁さんとか連れてきてるのにつまんないじゃねーかー!」
サッチは口を尖らせた。
「だからってな、これじゃあ人拐いと変わらないよい」
マルコは呆れながらため息をつく。
「あはは!サッチ捕まるのか?」
ケラケラと笑うエース。
「まぁ、良いだろ?宿には一人増えるって連絡入れたし、部屋は俺と一緒で良いんだしな」
サッチは言いながら愛子を縛っていた縄を外す。
「サッチさんの馬鹿ー!!!人拐いー!!!」
愛子がサッチに向かって叫ぶ。
残念ながらまだ縛られているので拳も蹴りも出せずにいた。
「夫相手に酷いなー、それとも」
サッチは急に笑みを消した。
「俺がここで愛子ちゃんに何も手を出さないって思うのか?」
ニヤリと笑うサッチの目は恐ろしいほど黒かった。
「……う、うわー、サッチさんと一緒に旅行出来るなんて……嬉しいなー……」
愛子は冷や汗をかきながら棒読みで声を出した。
「だっろー!!つー訳で無問題でしゅっぱーつ!!!」
サッチは上機嫌で愛子を抱き寄せて笑った。
「……」
「おーい、要!大丈夫か?」
慣れっこなのかエースは可笑しそうに笑いながら要を見た。
「え、えっと……だ、大丈夫!」
要はエースの手を握ると安心した様に笑った。
[ 1/6 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]