03

「で?どうして沈んでるの?」

坊っちゃんが私を振り返る。

「え?そんな事」

「あるだろ」

私の言葉を遮って 坊っちゃんは言い切った。

「ゆうってわかりやすいから」

少しだけ表情を和らげて 坊っちゃんが言う。

「沈んでる……って訳じゃなくて。ただ、結婚したら 坊っちゃんとは暮らせないなぁって」

「ぼく?」

キョトンとした 坊っちゃんの顔に私は慌てる。

「ほら!姉として貴方の行く末を見届けたいじゃない?」

何とか言葉を繋げるけど、早口になってしまう。

「拾ってくださったテオ様や育ててくれた奥様に恩返しも出来なくなるし……」

私はクスリと小さく笑った。

「……」

坊っちゃんは私の話を聞いて考え込む様に黙る。

「別にテオ様が決めたお相手が嫌な訳じゃないの」

私はそう締め括った。

「そっか……」

何かを思い当たった様に 坊っちゃんは呟いた。

「ごめんね、僕が早く出世するから」

そう言いながら 坊っちゃんは私と手を繋ぐ。

「え?」

「僕が父さんみたいな地位になればゆうも安心して結婚できるもんね」

坊っちゃんの笑顔に私の胸がチクリと痛む。

「ふふ、そうだね。未来の将軍様」

私は出来るだけ柔らかく笑う。

「…………そっか」

坊っちゃんはまたもや呟く。

「ゆうが父さんの子供を辞めれば良いよ!」

坊っちゃんはにこりと笑った。

「え?は?な、なんで?」

私は慌てて声を出す。今家を追い出されたら行く宛などない。

「そしたら僕と結婚できるじゃないか!そうしたらずっと一緒にいられるよ!」

嬉しそうににこりと笑う 坊っちゃん。

「え……?だ、だって!あ、」

私は慌てて意味のある言葉を出せずにいた。

「あ、それかテッドと結婚したらずっと一緒だよ!」

「は?」

思わず私は固まってしまう。

「それかグレミオ?パーンとか?」

真剣に悩む 坊っちゃんを見て私は思わず吹き出した。

「ふふ、何言ってるのよ」

私は子供な 坊っちゃんを見て笑う。
そうだよね。意味なんてわかってないよね。

「えー?ダメかな?僕は真剣なんだけど?」

ムー、と唸りながら 坊っちゃんは言った。

「ふふ、じゃあ、向こうに気に入って貰えなかったら 坊っちゃんが私と結婚してよね?」

私はクスクスと笑いながら、 坊っちゃんの手を引くと帰り道えと促した。

「もちろん!」

私達は笑顔で帰路についた。









貴方を見守る









「グレミオ」

「何です?ぼっちゃん」

「あの赤と緑を殺るよ」

「や?!やるの漢字がおかしいですよ!!」

「あってるよ。全く僕のゆうを」

「よく長年姉弟しててこの裏の性格隠せてるよな」

「余計な事教えたら怒るよ、テッド」

「その笑顔が怖いよ!」

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