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私が義父であるテオ様に拾われてもう何年だろう。
気付いた時には義弟である 坊っちゃんに小さな恋心を抱いてからそれほど経っていない。

テオ様と奥様には感謝しきれない程の恩義を感じながら私は今日も 坊っちゃんを見守り生きる。






「テオ様、お茶をお持ちしました」

グレミオさんに淹れて貰った紅茶を持ち、テオ様の書斎へやって来た。

「おぉ、ゆう。ありがとう」

テオ様は穏やかな笑顔を浮かべてペンを置いた。
この気遣いにいつも嬉しくなる。

「今日はハーブティだそうです。少しでも仕事の疲れが癒せると良いのですが」

私は言いながらハーブティとカップケーキを差し出した。

「眠くなったら困るな」

テオ様は冗談混じりに笑った。

「ふふ、お疲れでしたら休息も必要ですよ」

私はテオ様の前で心から笑う。

「もうすぐお前の誕生日だな。もう、二十歳か」

テオ様はにこりと穏やかな笑顔を私に向けた。

「はい。無事に年を取れるのもテオ様と亡き奥様のお陰です」

私は部屋に飾られる奥様の肖像画を見る。美しく、優しい女性だった。少し 坊っちゃんに似ている。

「……仕事が休めそうだ。皆で祝おう」

テオ様の言葉に私は驚く。

「本当ですか?!」

「あァ、娘の二十歳の誕生日だ」

「っ!!ありがとうございます!!楽しみにしてます!!」

私はテオ様の心遣いに胸が熱くなる。

「…………時にゆう」

「はい?」

珍しく歯切れの悪いテオ様に私は不思議そうに首をかしげた。

「お前も良い年だ。その、女性として」

テオ様がゆっくりと言葉を紡いだ。

「……」

「私の部下に良いのが2人ほどいる。一度会ってみてはどうか?」

テオ様の言葉に私の胸は先程の楽しみな気持ちはなかった。

「はい。テオ様が進めてくださる方でしたら間違いはありませんもの」

私は出来るだけ穏やかに笑った。

「そうか」

「ただ」

「なんだ?」

テオ様の目が安堵から少しの不安を宿す。

「誕生日が過ぎてからが良いです。素敵過ぎて誕生日を一緒に過ごしたくなったら困るので」

私はクスクスと笑った。

「そうか、わかった」

私の冗談に顔を緩ませたテオ様に私は少し辛さを感じた。

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