02
シャンクスがかなの元に来てから1ヶ月が過ぎようとしていた日。
「何だか今日はご機嫌ね?」
かなはネクタイを締めるシャンクスに言う。
「あァ。ようやくお前が居酒屋辞める日だからな」
シャンクスは当然の様に笑った。
「……私としては7ヶ月働いた訳だし、ちょっと寂しいよ」
かなは寂しそうに笑った。
「……帰りは迎えに行くからな」
シャンクスはスーツに腕を通しながら言う。
「別に大丈夫だよ!」
「行く」
「……わかった」
シャンクスの有無を言わさぬ物言いにかなはクスリと笑った。
「よし!なら行ってくる」
シャンクスは靴を履くとかなを引き寄せキスをする。
「い、行ってらっしゃい!」
かなは慣れないせいか、顔を赤くして送り出す。
「じゃあな」
シャンクスはにかりと笑うとドアを閉めた。
「……ふぅ、やっぱりカッコイイな」
かなは見えなくなったシャンクスの姿を思い描いてポツリと呟いた。
「へ?送別会?」
かなは驚いて声を出す。
「そう!今日は8時に終わるでしょ?そしたらそのままこの店でやろう!って事になったの!」
バイトの女の子が笑った。
「嬉しい!」
「本当?他のバイトもみんな来るって!シフト入ってる子もこれならチョコチョコ来れるし!」
女の子は「名案でしょ?」と笑った。
「うん!楽しみにしてる!」
「じゃあ!終わったら着替えて待ってて!」
「了解!」
女の子はにこりと笑うと先にフロアへと入っていった。
「嬉しいなぁ。あ、シャンクスに電話しておかなきゃ」
かなは携帯電話を取り出した。
ーープルルルル、プルルルル
耳に届く呼び出し音を聞く。
『 もしもし?かなか?仕事終わったのか?』
シャンクスの声が鼓膜を揺らす。
「ううん!これから。あのね、今日送別会があるんだって!」
『…………』
「それで、帰るの遅くなりそうだから先に寝てて。迎えもいらないから」
かなは嬉しそうに続けた。
『……』
「あれ?シャンクス?もしもーし?」
『…………聞こえてる』
電波が途切れた訳ではなく、ただシャンクスが無言だったようだ。
「そっか。今日でおしまいだからね!皆の気持ちが嬉しいんだ!」
かなは嬉しそうに笑った。
『…………わかった』
「うん!宜しくね!」
『……あァ』
「じゃあ!もう行かなきゃ!」
かなはそれだけを言うと電話を切った。
「うーん!楽しかった!」
かなはほろ酔いかげんで笑った。
「うぅ!!□□さんがいなくなるのが悲しいです!!」
泣き出す同僚の女の子が花束を渡す。
「ありがとう!時々飲みに来るからね」
かながにこりと笑った。
「お願いしまーす!!」
うわーんと泣きながらかなに抱き付いた。
「はぁ、楽しかったな」
花束を抱えてアルコールで火照った体には外の風が心地よかった。
「かな」
低い声に呼ばれそちらを見る。
「え?しゃ、シャンクス!!!」
かなの頭は驚きに混乱した。
「どうしたの?」
「迎えに来た」
かなは驚いたが、迎えに来てくれた事が嬉しくて駆け寄った。
「ありがとう!凄く嬉しい!」
かなはへらりと赤い顔で笑うと抱き付いた。
「はァ、帰るぞ」
「うん!」
シャンクスはかなの肩を抱くと家へと歩き出す。
「全く。この姿を他の男にも見せたのか」
シャンクスは怒るように声を出した。
「え?うん、店長とー、バイトの大学生もいたよ」
かなは素直に声を出す。酔っているからか、テンションがやや高い。
「……そうか」
シャンクスは苛立たし気に頷いた。
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