03
「そう言やさ、大学の学食で豆腐サラダ旨かったよな!」
当然の様に同じテーブルに着いたサッチがマルコへ声を出した。
A定食に揚げ出し豆腐が乗っていた。
「あァ、あったな」
マルコはメインの鯖の味噌にを食べる。
「あの豆腐、絹ごし豆腐でさー!旨かったよな!」
サッチは思い出した様に声を出す。
「いや、木綿だったよい」
マルコはポツリと声を出す。
「いやいや!絹ごし豆腐だったよ!」
サッチが言い返す。
「固かったろい?」
マルコもむきになる。
「いやいや」
「何言ってる」
2人が豆腐について言い合う。
(あれって……)
「絹ごし……」
アーヤも食べた事のあるサラダを思いだし、ポツリと言う。
「「え?」」
サッチとマルコが同時にアーヤを見る。
「あの、あれですよね?ミニトマトとキュウリとレタスが乗ってる。中央学食での 」
アーヤは口を開く。
「私は中華ドレッシングが好きでした」
アーヤはにこりと笑った。
「…………あ、あれ?もしかして同じ大学?!」
先にサッチが気付いた。
「え?……!!!は、はい!」
アーヤは自分からバラしてしまったと、慌てて頷いた。
「そっかー!だから見た事あるのか!」
サッチはにかりと笑った。
「……■■大学かい?」
「は、はい」
アーヤはマルコの言葉に小さく頷いた。
「やっぱり中華ドレッシングだよな!わかってるー!そんでさー!」
サッチが嬉しそうに大学の話をした。
それから仕事をこなし、午後10時頃にようやく終わった。
「ごくろうさん。これで終わりだよい」
マルコはそう、満足そうに笑った。
既に部屋にはマルコとアーヤしかいなかった。
「ありがとうございました。これからも我が社を宜しくお願いいたします」
アーヤは満足する疲れと共に深く頭を下げた。
「あァ。それじゃあ、気を付けて帰れよい」
マルコは言いながら煙草を出して喫煙所へと向かった。
「……はい、ありがとうございました」
アーヤは荷物を持つと部屋を後にした。
「これで終わり……か」
アーヤはエレベーターホールで足を止めた。
「もう、とうぶんマルコさんに会う事もない」
言いながらボタンを押す。
チンッと言う無機質な音と共にエレベーターが開いた。
「…………会えない」
明るいはずのエレベーターの中が暗く見えた。
また、景色が暗くなる。マルコがいないと言うたった一つの事で。
「また、目に映らない、追えない。マルコさんの名前も聞けない。声も……聞けない」
アーヤはその場を動けずにいた。
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