02

「すー、はー、緊張する」

アーヤは言われた時間より早く白ひげへ来ていた。

「今日はしっかりしなくちゃ」

アーヤは意を決して正面玄関をくぐり抜けた。




「今日は宜しくお願いいたします!」

「あァ、期待してるよい」

ニヤリと笑うマルコの顔に思わずときめいてしまうアーヤ。

「はい!」

「じゃあ、キリキリ働いてもらうよい」

マルコは言葉通りアーヤをスパルタ教育の様に仕事をさせた。





「っと、これが」

アーヤはパソコンの前で他の白ひげ社員の質問に答えながらまとめた企画書通りに仕事をこなす。
マルコの人使いは荒かったが、一緒に居られる喜びを味わっていた。


ーーキーンコーン


学校のようなチャイムが鳴り、昼時間を知らせる。

「飯行くぞー!」

「あ、切りの良い所までやらせて頂きます!」

「そっかー?俺達先に行くぞ!」

「はい!わかりました!」

白ひげ社員に断りを入れるとパソコンに向き直る。


「っとー!よし!保存」

「終わったかい?」

「わぁっ!!!」

独り言を言うと近くで声がしてアーヤは驚きの声を上げた。

「ま、ままままままマルコ部長さん?!」

アーヤは驚いてそちらを見るとマルコが眠たそうな目をしていた。

「……ずいぶん進んだな」

マルコはパソコンの画面を見ながら感心した声を出す。

(ち、近い……)

アーヤは不自然でない様にマルコからそっと離れた。

「飯に行くよい」

「え?」

アーヤは誘われた事に驚いてマルコを見上げた。

「うちの社食は旨いよい」

自信ありげなマルコの笑顔にアーヤは気付くと頭を下げた。







「何にしよう……」

アーヤはそのメニューの多さに驚きながら声を出した。

「お!マルコもこれからか?」

振り返るといつぞや大学で見かけたフランスパンのリーゼント男がいた。

「サッチ」

マルコが男の名前を呼んだ。

「A定2つ」

マルコが社食の店員に指2本を立てながら言う。

「俺の分?」

「違うだろい」

サッチの言葉に呆れながらマルコが言う。

「じゃあ……?」

サッチがチラリとマルコの隣のアーヤ を見る。

「おや!こんなところに可愛い子ちゃん!…………んー?どこかで見たような……」

サッチはじーっとアーヤに顔を近付ける。

「あ、それは」

「使い古したナンパするなよい」

マルコは呆れた様にサッチからアーヤの姿を隠すために片手でサッチの目の辺りを叩い。

「イッテェ!!!!」

サッチは痛そうに顔を擦る。

「こいつには気を付けろい」

「……」

マルコのすました顔に思わず汗をかく。

「痛ェなァ……。おばちゃん俺もA定ね!」

サッチは怒り気味にA定食を頼んだ。

出来上がったA定食の1つをマルコはアーヤに渡す。

「旨いから食っとけよい」

マルコは言葉短く 言うとレジへ向かう。

「あ、はい!」

するとマルコがレジで2つ分の金を払う。

「え?え?!」

そのままマルコに慌てて付いて行く。

「あ、あの、お金!」

アーヤは自分の財布を取り出す。

「ここは社員証がないと買えない。気にするなよい」

マルコは言うと席を見付け座る。

「え?でも……」

アーヤはわたわたと慌てる。

「俺の顔を立てると思えよい」

柔らかく笑うマルコにアーヤは頷いてしまった。

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