01

アーヤは大学を卒業して2年。
何事も自分から動かなくては何も出来ずに後悔すると学び、自分から色々な事にチャレンジしてきた。

しかし、恋愛面ではなかなか発揮できずにいて「この人良いな」と思っても勇気が出なかった。





「□□!明日のクライアントは一緒に行くぞ!」

部長に声をかけられ、アーヤは不思議そうな顔をした。

「田中の奴がインフルにかかったみたいだ」

やれやれと部長は頭を抱えた。

「お前もそろそろ中堅だしな、大切なお得意様だからな。顔を覚えて貰え!明日は安いスーツで来るなよ!」

「は、はい!」

アーヤは勢いよく頷いた。







「それではこちらでお待ちください」

翌日、スーツも化粧にも気合いを入れていた。
やけに大きなビルの中、応接室も豪華でアーヤは緊張していた。

「おい、□□。緊張し過ぎだ」

部長が苦笑いをした。

「だ、だって、白ひげって!世界でも有数な大企業じゃないですか!緊張しない方がおかしいです!」

アーヤは心臓の鼓動がおかしくなりそうだった。

「取り合えずお前は笑ってろ。ほら、来たぞ」

重いドアが開き、部長はそれに合わせて立ち上がり、アーヤも慌てて立ち上がった。

「どうも、お忙しいのに時間を割いて頂きまして」

部長が何か話すがアーヤは固まって動けなかった。

「気にするなよい。あァ、座って。そっちは?」

マルコは自分も腰を下ろしながらじっとアーヤを見た。
今まで見ていただけで、決して見られた事などなく、ましてやこうして見つめ合う事もなかった。

「今度新しくこの企画に組み込む□□です。ほら、挨拶」

ソファーに再び腰を下ろした部長がアーヤを慌てて叩く。

「はっ!!□□と、も、申します!!宜しくお願いいたします!!!」

アーヤは我に返ると頭を勢いよく下げた。

「……ずいぶん元気なのを入れたねい」

マルコは眠たそうな顔のままアーヤを見る。

「あはは……宜しくお願いします」

部長は冷や汗を滴ながら笑った。

「じゃあ、さっそくだがよい」

マルコと部長の元から用意していた企画書についての話を呆然と聞きながらアーヤはチラチラとマルコを見た。

言葉を交わすのも、視線を合わせるのも初めてだった。
心臓は凄い速さで脈打ち、まるで体全部が心臓になったように脈打った。








あれから週に一度白ひげに行っては会議を繰り返した。
結局田中ではなくアーヤが引き続きそこに向かった。

他の白ひげ社員の前では何とか普通に振る舞える様になったが、どうしてもマルコの前では緊張してしまった。

「つー訳で、明日1日□□を借りるよい」

マルコの言葉の意味が解らず目を瞬きさせるアーヤ。

「解りました。良いか?□□。しっかりわが社を売って来いよ!」

にかりと笑う部長を呆然と見上げた。
企画が佳境に入り、アーヤが自社代表として白ひげ社員達のサポートになったのだ。

「宜しく頼むよい、□□?」

にやりと笑うマルコにアーヤの顔は熱を集めた。

「い、一生懸命頑張ります!!!」

アーヤはもう後悔はしたくないと勢いよく頭を下げた。

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