07
「……はぁ」
○○は本日何回目かわからないため息をついた。
「どうしたの?今日はため息ばっかり」
バイト仲間のナミが不思議そうに聞いてくる。
高校生の彼女は○○等よりスタイル抜群の美少女で、○○よりも年上に見えた。
「ううん。ごめ、なんでもない」
「そ?なら、良いけど」
ナミはそう言うと、通りかかる客に「いらっしゃいませ」と声をかける。
美人は特である。
実際にナミがバイトに入ってから店の売り上げは上がる一方。
休日の午前中はほぼ、2人だけでお店に立つ。
「おぅ!ナミ!!食いに来たぞ!」
お決まりの様にナミの友人ルフィがアイスを食べに来る。
ナミは「はいはい」と答える。
「いらっしゃいませ、ルフィ君!」
「おう!○○!!」
○○ともすっかり仲の良い顔見知りになっていた。
「おい、ルフィ、店の中では騒ぐなって」
ルフィと一緒に現れたのはいつも一緒に来るシャンクスと言う赤髪の男とその奥さん。
「今日もダブル三個ですか?」
レジ係の○○が客であるシャンクスを見上げる。
「いや、今日は4つ」
シャンクスは指を4本立てる。
「はい、かしこまりました」
○○とシャンクスがお金と引き換えにアイスのダブルの券を4つ渡す。
「チョコミント!いや、キャラメル……抹茶……」
ルフィはショーケースにかじり付いてアイスを選ぶ。
「私はミルクとイチゴ」
「はい!」
●●は券を渡しながらナミに言う。
「じゃあ、ラムレーズンとエスプレッソ」
シャンクスが券を渡した。
「はい、お待ちください」
○○は丁寧にアイスをよそる。
「で?決まったの?ルフィ」
ナミが呆れた様にルフィを見る。
「うー」と唸っているのを見て、○○はナミに任せて在庫の確認をする。
「おい、ルフィ。さっさと決めろよ」
その声に○○はドキリとする。
恐る恐るショーケース越しに見るとそれは紛れもないエースの姿。
「なんだよ!?そう言うエースは決まったのかよ!?」
「キャラメルとバニラ」
エースはナミに券を渡す。
「うー!なら俺はココアとチョコ!」
「違いが解らねぇ」
「良いんだよ!○○!俺ココアとチョコ!!」
ルフィは○○に声をかける。
「○○?」
エースは驚いて声を出す。
「……かしこまりました」
○○は仕方なく振り返り、エースを見ないようにしてルフィから券を受け取る。
その間射すような視線をエースから受けていた。
「はい!ココアとチョコ!おまけはチョコミントね」
○○はショーケース越しにルフィに笑いかける。
「やった!ありがとうな!○○!!」
にししとルフィは嬉しそうに笑った。
「いえいえ、どういたしまして」
○○はルフィに笑いかける。
(こ、怖い……)
チラリとエースを見ると、じっと見られている。その目がニヤリと笑っていてとても怖かった。
「なんだ?お前ら知り合いか?」
その視線に気付いたのはただ者ではないシャンクス。
「おう!」
「同じ大学で」
嬉しそうなエースに○○はそれだけ呟いた。
「なに?彼女?」
●●がにこにこと聞く。
「……いや」
歯切れの悪いエースに○○は「おや?」とエースを見る。
「なるほど……」
○○は何となく気付いてしまった。
エースは彼女が好きなのだ。
(なんだ、そっか。やっぱりね)
○○は胸にズキリと痛みを感じたのを気付かない振りをする。
「ごゆっくりどうぞ」
○○はにっこりと微笑むと椅子を案内する。
○○は1日笑顔で仕事を乗りきった。
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