05
金曜日は不思議と気分が楽になる。
土曜日が休みだからだろう。
○○もその一人で、午前の授業が終わった所だった。
「じゃあ、私帰るね!」
「また月曜日に!」
「またねー!」
同じ学科のいつも一緒にいる友達2人は午後の授業が無いので帰って行った。
「私も午後の授業取らなければ良かったかなぁ」
○○は午後の授業に向け、昼食を食べようと学食へと向かう。
ーーどーはどーなつのどー
着信音に○○はディスプレイを見て、出るか出ないか迷う。
「……なんだろう」
名前の欄は「携帯」とかかれた、名前も知らない男の番号。
それは、携帯電話を拾った時に「消すなよ」と言われたものだ。
あれから数日経ってかかって来なかったから油断していた。
迷っていると着信音は鳴りやむ。
ホッとしたのもつかの間、すぐに着信音が鳴り響く。
「……はい」
恐る恐る○○は出る。
『お!出た出た!これから飯行かねぇか?』
「……はい?」
『今から正門な!分かるだろ?』
「そ、そりゃあ」
『じゃあ、待ってる』
ーーぷっプープー
「え?」
一方的な電話の後、すぐに電話は切れた。
「これは“私”にかけたのかな?それとも間違え?」
間違え電話で行ったら恥ずかしい。いや、それなら取り合えず正門に行って、○○に反応しなければそのまま本屋にでも行けば良い。
それか、間違えは正してあげなくては。
○○は冷たく重い足を引き摺り、正門へと向かう。
「……いる」
正門が見える場所まで行くと、確かにテンガロンハットをかぶったこの前の男がいた。
○○は迷いながらも、意を決して正門へと再び歩き出す。
「あ、あの……」
間違って私にかけたと言わなければ。
○○はエースに声をかける。
「お!待ってたぜ!来なかったらどうしようかと思った」
と、にかりと太陽の様な明るさで男は笑った。
「え……かけ間違えじゃないの?」
○○は嫌な汗をかく。
「そんな訳ねーよ。○○」
「え?何で私の名前……」
「やっぱ、覚えてねェか」
エースは少し寂しそうに笑った。
「え?」
「俺はポートガス・D・エース!以後、宜しく」
エースは丁寧に頭を下げる。
「ご、ご丁寧にどうも、私は」
「□□○○だろ?」
「っ!!え?何で?!」
エースの言葉に○○は心底驚いた顔をする。
「俺達前に会ってる」
「ど、どこで?」
「さぁ?」
エースはニヤリと笑った。
その顔に○○の不安は募る一方だ。
「それより、腹減った」
「は」
「金もあんまりねェし、ラーメンで良いか?」
「え?」
「うまい店知ってんだ!行こう」
エースはにかりと笑うと先を歩く。
○○が動けずにいると、エースは立ち止まり振り返る。
「今すぐホテルに連れ込んでも良いんだぞ?」
「っ!!」
エースの言葉に○○は慌てて後を追う。
エースは自分に付いてくる○○を満足げに見た。
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