03
「おーい、エース!昼飯行こうぜ!」
「おぅ!」
いつもの学食はまだ空席がある状態だった。
「俺、カツカレー大盛」
「了解!なら、席取っとけよー」
「おう!」
気の良い仲間は食事を買いに並ぶ。
人数分の席を求め、エースは辺りを見回しながら歩いた。
「っ!あれは……」
エースの視線の先は○○が友達と楽しそうに笑っていた。
エースは隣のテーブルに座り、鞄を下ろす。
エースは自分が少し緊張するのを感じた。
(何でたよ)
エースは苦笑すると、そっと聞き耳を立てたら。
「私はクライブだね。飛び道具好き!」
「私はルック使ってた」
友達2人は次々と名前を挙げていく。
「うーん、私はやっぱりビクトール!」
○○から楽しそうに男の名前が出るのにエースはぎくりとする。
「あー、良いよねビクトールも」
クライブ好きだと言ったショートカットの大人っぽい女が頷く。
「でしょでしょ!強いし!大変な過去を持ってるのに前向き!最高!」
○○はにこにこと笑う。
「フリックじゃないの?」
ルック好きと言った髪の長い優等生タイプが聞く。
「うーん。いや、正直ビクトールは結婚して欲しい!」
「結婚って!」
「ふふふ」
○○の発言に友達と楽しそうに笑う。
しかし、それを聞いていたエースは自分が思った以上にショックを受けているのを感じた。
「ほら、エース!カツカレー……エース?」
「こいつ、また寝てるぜ!」
ケラケラと笑う悪友達。
それでもエースは顔を上る事が出来なかった。
「はぁーーー」
「あらら、エース。お前どうしちゃったの?」
バイト中、ため息をつくエースにサッチが不思議そうに覗き込む。
「……サッチ」
「ん?悩みならお兄さんに言ってみな」
「…………変な顔」
「っちょ、それ酷くない!?俺もー傷付いた!!」
サッチは大袈裟に泣いた。
「お前らうるせェよい!!!」
ガツン、ガツンと鈍い音かして、エースとサッチの頭にたんこぶが出来た。
「痛っ!!!」
「な、なんで俺まで?!」
サッチがマルコに文句を言うが、マルコはそれを無視する。
「何やってんだい、エース」
「マルコ……」
エースは弱々しく声を出す。
「俺は女運がねーのか?」
エースがぽつりと呟いた。
「高校生で人妻狙いだったもんな!」
サッチがニヤニヤと笑う。
「……せっかく●●を諦められると思ったのによ……」
エースは小さく小さく呟いた。
家にいる時のエースはお兄ちゃんなので、弱音は吐かない。
しかし、バイト先では家族同然の仲間達はエースを末っ子と言う。
それなので、エースは弱音を吐ける。
「□□か?」
マルコがエースに問いかける。
「あァ、好きな奴がいるんだと。結婚したいんだってよー」
エースはそう声を出す。
「あらら、それはそれは」
サッチがエースを哀れみの目で見る。
「良いじゃねーかよい。奪えば」
マルコは事も無げに2年前と同じ事を言う。
「…………でもよ」
エースは口を開く。
「前はすでに人妻で相手が赤髪だい。部が悪すぎたんだよい」
マルコがそう真面目な声を出す。
「……」
「相手の奴は知ってるのかい?」
「いいや」
エースは首を振る。
「なら、戦わずして負けるのかい?」
「…………いいや」
「なら、また泥みたいになれば良いよい」
マルコがニヤリと笑った。
「そうだな。そうだよな!ありがとう!マルコ!!」
エースは元気を取り戻す。
「なら、仕事とっとと終わらせろい!」
「おう!」
エースはニヤリと笑った。
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