その後の時間7
マフラーや手袋が恋しくなって来た季節。
○○は白い息を吐きながら走っていた。
時刻は夕暮れ。
エースとは5時間ほど前に別れた。
○○の家の都合で早めに帰ったのだ。
しかし、家の用事が一段落して鞄の中を見ると、何故かエースの免許証が入っていた。
「そう言えば、見せてもらったんだ」
まだ免許の無い○○はエースの持つ免許証を見せてもらったのだ。
これはまずいと○○は夕闇迫る中、エースの家へと走っているのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ。エースいるかな?」
○○はエースの家まで来ると、呼吸を整える。
ーーピンポーン
ゆっくりとチャイムを押した。
「あーい!」
ガチャリとドアを開けて出て来たのはエースの弟ルフィ。
「あ!○○!」
ルフィはにかりと笑った。
「こんばんは、ルフィ君!エースいる?」
○○はまだ少し上がった息のまま声を出した。
「いや、いねェ」
「いない?」
○○が不思議そうに聞く。
「今日はバイトなんだって言ってたぞ」
ルフィは思い出しながら言う。
「あ、そっか」
「意外と抜けてんな!!」
ルフィはにししと笑った。
「あのね、エースが免許証忘れて」
○○が免許証をルフィに差し出す。
「なんだよ!エースも抜けてんな!!」
ルフィが笑いながら免許証を受け取る。
「ううん。私が見せてもらったら返し忘れちゃって」
○○が照れ笑いを浮かべる。
「ドジだな!」
「アハハ……」
ルフィの直球に○○は困った様に笑った。
「悪いけど、返しといてくれる?」
「わかった!」
ルフィがにししと笑った。
「じゃあ、お邪魔しまし」
「飯出来たぞ!!」
ガープの声が響く。
「おぅ!!!あ!○○も食ってけ!」
「へ?いや、悪いよ」
「ジィちゃんの飯もうまいんだぞ!」
「あの!」
ルフィは○○の言葉を聞かないまま手を引いて家の中へ連れ込んだ。
「お?○○さんだったか!」
エプロンをしたガープが○○を振り返る。
「こんばんは」
○○がぺこりと頭を下げた。
既にこの家には何回も来ているので、ルフィやガープとも顔馴染みになっていた。
しかし、エース抜きでは初めてなので、○○は少し緊張しながら挨拶をした。
「エースの忘れ物持ってきてくれたんだ!」
「そうだったのか。じきにエースも帰ってくるじゃろう。一緒にお座り」
ガープに促されるままに席に着く。
「あ、手伝います!」
「そうか?ならこれを運んで」
受け取ったのは大きなサラダが入った器。
(豪快!)
○○は嬉しそうに運ぶのを手伝った。
ーーブロロロロロ
「あ!エースだ!」
けたたましい爆音が鳴り響き、ルフィが嬉しそうに窓を見る。
「悪いが○○さん、出てくれんか?」
ガープが箸を並べながら○○に言う。
「え?あ、はい!」
○○はにこりと笑って玄関へ走った。
「ただいまー。疲れたー」
「おかえりなさい!」
「マルコの野郎こき使い過……」
エースが靴を玄関で脱いでいる時にいつもの声と違う気がして、まさかと顔を上げる。
「お疲れ様でした!エース!!」
○○はにこりと笑ってエースを出迎える。
「え?○○?俺疲れてとうとう願望が見えてる?」
エースはポカンと○○を見る。
「エース君は免許証不携帯運転です」
○○は笑顔のままで指をさす。
「え?あ!ねェ」
エースが上着のポケットをまさぐる。
「ごめんね。今日私が見せてもらっちゃったから」
○○は申し訳なさそうにルフィに一度渡した免許証をエースに渡す。
「いや、わざわざ悪かったな」
エースは○○の頭をぽんぽんと叩く。
「ううん!エースにも会えたし」
○○はにこりと笑った。
「…………上行くか?」
エースはにやりと○○の耳元に唇を寄せた。
「ちょっ!!」
○○は慌ててエースから体を離そうとする。
エースは片手で軽々と○○を引き寄せる。
「おーい!早く飯食おうよー!!」
ルフィがひょこりと玄関に姿を表した。
「っ!!そ、そうだね!」
○○は慌ててエースから離れる。
「ちっ」
エースは舌打ちをしてから2人の後を追った。
「なぁ、一緒に住まねェか?」
「へ?どうしたの?急に」
「いや、○○に「おかえりなさい」って言われてすぐに抱けないのつまんねェからさ」
「…………無理でしょ」
「えー。つまんねェな」
「ふふ、我慢、我慢!」
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