初日の出に祝いの言葉を

ドルン!ドルルルル


エンジンをふかすとエースはバイクを発車させた。

行き先はいつも行く海。

後ろにはルフィではなく○○を乗せる。

まだ薄暗い道をバイクは爆音と共に走る。

元旦。

スピードの出るバイクは寒いはずたが、お互いの体温を感じる。

ギュッとしがみつく体にエースは心地好さを感じていた。







いつもの駐車場は初日の出を見ようとする人で賑わっていた。
○○は少しガッカリしていると、バイクは停まる気配を見せずに通り越す。

「え?」

不思議に思った○○はエースの肩を叩くと気付いたエースに先程の駐車場を指さした。

エースはヘルメットで表情は解らないが、進行方向を指さした。

「っきゃ!」

急にスピードを出したエースの背中に慌ててしがみつく。

エースの肩が小さく震えた気がした。

「笑ってる!」

○○は届くはずのない声を出した。








スピードを緩めて着いた先はいつもの駐車場から300メートルほど先の岩場だった。

「エース?ここは?」

エンジンを切るのを確認してから○○は声を出す。

「初日の出を見るならここだな。向こうは混むからな」

エースはヘルメットを取りながら声を出す。

「でも、ここ砂浜しかないから本当はバイク停めるの嫌なんだよな」

エースは落ちていた木の板をバイクのスタンドの下に敷いて安定させた。

「ならあっちで見たら良いのに」

○○はいつもの駐車場の方を指でさす。

「そりゃ、2人だけのが良いだろ?」

エースはニヤリと笑うと手を出した。

○○はそれもそうだ、とエースの手を取る。

エースは○○の手を引いて岩場を軽々と登っていく。

「あ!だいぶ明るくなって来たね!」

○○は嬉しそうに水平線を見る。

「そうだな。もうすぐかな」

エースも腕時計で時間を確認してから海を眺めた。

「あー!なんかドキドキするね!私、初日の出って初めて!」

○○は少し紅潮した頬でにこりと笑った。

「本当は年越しも一緒にしたかったのによ」

エースは少しだけ拗ねた様に言う。

「ご、ごめんね。うちの親、泊まりはダメだって」

○○は申し訳なさそうにエースを見上げた。

「…………。ったく、婚約者なんだぜ?俺は!」

エースはブーッと口を尖らせる。

「…………うん」

○○は少し寂しそうに笑った。

「どうした?」

「ん?昨日、家族で年越ししててね」

「あァ」

「こうして、家族で年越しを出来るのも後数回なんだなぁ、って」

「…………」

「エースと結婚したら、家族だけで年越しする事もなくなるなぁって。少し、思ったの」

○○はにこりと笑った。

「…………それでも俺はお前を諦める気はねェよ」

エースが真剣な顔で言う。

「もちろん!私だってエースを諦める気は無いからね!」

○○は力強く頷いた。

「おゥ!!」

エースは嬉しそうに頷いた。

「○○の父さんも母さんも結婚したら俺の家族になるんだ。家族は減る訳じゃなくて増えるんだぜ?」

エースはイタズラっ子の様に笑った。

「あ……そっか!」

エースの言葉には優しさが宿る。

「それに、俺は家族がいっぱいいるんだぞ!ルフィは弟だし、サボも兄弟だ!それにマルコだって兄貴だぞ?」

「え?!マルコ先生も?」

○○は驚きに声を上げる。

「ああ!親父を、白髭を慕ってる奴等はみんな家族だからな!」

エースはにかりと笑った。

「……そっか。うん!それなら寂しがってる暇はないね!」

○○はにこりと笑った。

「だろ?あ!そろそろ昇るぞ!」

エースが地平線に目を向ける。

「うわぁ!」

あまりにも綺麗なその光景に○○の胸は高鳴る。

地平線が一直線に光ったと思ったら、太陽が少しずつ顔を出し始める。
そして海面はキラキラ、ゆらゆらと美しく舞い踊っていた。

「エース」

「ん?」

あまりにも綺麗なその光景に2人は無言でいた。
心地よい沈黙を破ったのは○○であった。

「お誕生日おめでとう」

「……おう」

エースは少し驚いて笑った。

「貴方がこの世に産まれてきてくれたお陰で私の世界はこの海みたいに広く、美しく輝いたの」

「……」

「エース、大好き!これからもずーっと一緒にいてね!」

○○はにこりと笑った。

「……」

エースは○○をかき抱く。

「泣いてる?」

「泣いてねェ。○○がすげェ臭い事言うから、匂い消してるんだよ」

「えー!なにそれ!」

○○はエースに抱き締められたまま笑った。

「エース」

「ん?」

○○もギュッとエースを抱き締めた。

「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」

クスクスと笑いながら言う。

「あァ。宜しくな!」

エースは初日の出の様ににこりと笑った。








「さて、どこか入るか」

「そうだね。さすがに冷えちゃった」

「誘ってるのか?」

「へ?ち、違うよ!」

「姫初めでもすっか」

「ひめ?エース、お姫様になりたいの?」

「……知らねェか。なら教えてやるよ」

「ね、ねぇ、その顔怖いよ」

「気にすんな」

「気にするよ!!」




***




happy birthday エース!!!

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