02

エースは大学へと足を動かした。

一昨日の合コンは結局誰も誘わずに終わった。

いつもなら誘われた女とホテルなどに行くが、どうしてもそう言う気分にならなかった。

○○と言う女が気にはなったが、一次会が終わるとさっさと帰ってしまった。
追いかけようかとも思ったが、幹事に主役が抜けるな!と言われてその後のカラオケに付き合った。

「まァ、もう会う事もねェしな」

エースはそんな事をぼんやりと考えながら講義室についた。

知り合いのマルコが講師として呼ばれているので、1限の授業ながら、取っていた。

人数もまばらで、しかも相手はマルコなので寝る事も出来なかったが、なかなか面白い授業だった。


廊下側の真ん中よりやや後ろの席に座り、授業前のぼんやり感を味わう。

後ろから自分の横を通り抜けて真ん中よりやや前の席に腰を下ろした女がいた。

エースは何の気なしに彼女を目で追って驚いた。

(あの、○○って奴だ)

同じ大学だったのかと思い当たる。

彼女も一人なのか、長テーブルに教科書やルーズリーフを並べ、授業に臨もうとしていた。



その授業はマルコの話など聞いていなかった。

前の方に座る彼女。

○○とエースの間には誰も座っておらず、遠いながらも彼女を後ろから眺めていた。

(早く終われ)

一時間半の授業は長い。
そう思いながら時おりマルコを睨み付ける。

マルコはエースのその目線を感じてニヤリと笑った。


マルコの授業はチャイムが鳴るまで続けられた。




授業が終わると○○は鞄に教科書やルーズリーフをしまう。

そして席を立つ。

「まっ!」

「エース、テメェ俺の授業聞いてなかったろい!」

○○に声をかけようとしたが、先にマルコに捕まった。

「あ?それより大切な」

エースは言いながら○○を目で追うと丁度教室の前のドアから出ていった。

「待て!」

「おい!」

エースは走ったが、廊下には人がごった返し、○○の姿はどこにもなかった。

「クソッ!!!」

エースは悔しそうに舌打ちをした。

「知り合いでもいたのかよい」

マルコが面倒臭そうに首の後ろに手をやる。

「あァ」

エースは頷いた。

「彼女なら、毎回出席してるよい」

「あァ?!」

エースはマルコを振り返る。

「んで、マルコがそんな事知ってるんだよ!」

「俺の授業だよい」

「…………そうだな」

エースは納得する様に頷いた。
なら、来週も会える。

エースがホッとする。

「来週は講義休みだい」

「はァ?!」

「さっき言ったよい」

マルコは飽きれ気味にエースを見る。

「今日も仕事だろい?遅れるなよい」

マルコはそう言うと去っていった。

エースは仕方なく鞄を持って次の授業の教室へと向かった。





「お!エース朝イチの授業お疲れさん!」

「あァ」

「なんだその、嬉しいんだか、残念だか、訳わかんない顔だな」

「うるせー」

「そう言や、また合コンしようって!」

「俺、行かねー」

「え?」

「興味失せた」

「え?まだ二十歳だぜ?」

「………………そっちじゃねー」

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