30
女が持つナイフは、○○の体を掠める事なくエースに叩き落とされた。
「テメェ……」
エースが低い声で女を睨む。
「え、エースが悪い!私を見ないから!この女が憎い!エースを私から奪うから!!」
女はナイフを拾い、更に襲いかかろうとする。
「っの!」
エースが迎え撃とうとするのを○○が止めた。
女のナイフは○○が思いきり叩き落とした。
「ダメ!エースはこの人を殴っちゃダメ!やるなら私がやる!」
○○はキッとエースを見上げる。
「○○?」
エースはキョトンと○○を見る。
「この子はエースの事が好きなんだよ。好きでおかしくなっちゃったの。そんな子をエースが殴ったら悲しいよ」
○○が振り返ると女は倒れていた。
「え?な、なんで?!」
何もしていないのに、倒れている女を見て○○が驚く。
「これのせいだねい。催眠効果があるよい」
近くに来ていたマルコが女と煙の入った瓶を見る。
「近付くなよい。結構強いやつだい」
マルコはそれをひょいと持ち上げる。
「せ、先生は平気なんですか?」
○○は恐る恐る聞く。
「あァ、特別だよい」
マルコはニヤリと笑った。
○○はその笑顔に少し背中がぞくりとした。
「さて、後はお前だけだな」
隠れる事も逃げる事も出来ずにいた髭の男にエースは対峙する。
「くっ!お前など!誰が認めるものか!!!」
髭の男が苦し紛れに叫ぶ。
「それがさ、意外と多くて俺も驚いてる」
エースがニヤリと笑った。
「それに、俺には○○もいるしな!」
エースはにかりと太陽の笑顔をした。
「それじゃあ、さよならだ」
エースは髭の男が襲いかかってくるのに合わせて拳を振り上げた。
「ここは俺に任せろよい」
マルコの言葉に甘えて、エースは○○をバイクに乗せ、その場を去った。
エース達の掛かり付けの医者に見せ、治療してもらった。
「腫れは少し引かないな。ちゃんと冷やすんだぞ」
医者に感謝して病院を後にした。
「どうだった?」
エースは○○が出てくると駆け寄る。
「うん、少し腫れは引かないって。これじゃあ家に帰れないね」
親に心配かけちゃうと○○は殴られた箇所を冷やしながら困った顔をする。
「うちに泊まるか?」
「……え……?」
「大丈夫だ!さすがに今日はしねーよ」
エースが慌てて言う。
「そ、そうだよね。こんな顔じゃ」
○○はエースから顔を背ける。
「それはない!」
エースは自信満々に言う。
「……あ、ありかとう」
○○は照れながら言う。
「礼を言うのはこっちだ。ありがとう」
エースはにこりと笑った。
「俺さ、親父のせいで昔から結構嫌な思いしてんだよ。だから、ああ言う風に言ってくれて、何か嬉しかった」
「エース……」
○○はエースが辛い思いをしてきた事を知ったが、どんな思いだったのかは、本人にしか知り得ない事だった。
「わ、私はエースの味方だよ。ずっと」
○○は照れながらもきちんと声に出して言った。
「○○……」
エースは○○を抱き寄せる。
「エース、大好き」
○○は気持ちを込めてその言葉を口にした。
「やっぱり今日泊まってけよ」
「え?いや、あの」
「無理だ。俺がどれだけ○○の事が好きなのか教えてやる」
「は?え?」
「今すぐにでもここで抱きたいくらいだ」
「そ、それはさすがに無理!」
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