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「マルコ、手ェ出すなよ」
「よい」
エースはマルコに言い、マルコがそれを承諾する。
「お前達!エースを捕まえろ!!」
男達がエースの手足を押さえ付ける。
エースはされるがままだった。
「エース!!」
○○は焦った声を出す。
「お嬢さん、人の心配してる場合じゃないぞ。やれ」
髭の男がニヤリと笑った。
髭の男の声に○○を押さえ付けていた男達が再び動き出す。
「っや!!」
「止めろ」
決して大きな声は出していない。
しかし、その場の全員が動きを止める声が響く。
「俺はさ、昔。大好きでどーしょもねー女を目の前で犯されてるんだよ」
エースの声だけが建物内に響く。
他の音は人間の息を飲み込む音くらい。
不気味なほど静かだった。
「それがさ、悔しくて、情けなくて……俺はその事にすげー締め付けられててさ。そいつは気にするなって笑うんだけど、それが余計に辛くてな」
感情の籠らないエースの声。
「それを、俺のために晴らさせてくれるってのかい?有り難い」
獣の様な低い唸り声と殺気がエースから流れ出る。
「「「っ!!!!」」」
その場にいたマルコ以外の全員が固まった。
それは、○○も例外ではなく、恐怖を感じる。
「○○」
「え?」
いつもの大好きなエースの声質。
「すぐ終わる。怖かったら、目ェ閉じてろ」
エースのにかりとした太陽の笑顔が自分を見ている。
「うん!」
それだけで今までの恐怖は消え去り、○○は素直に頷いた。
「っ!怯むな!殺れ!!!」
髭の男が叫ぶ。
捕まえられているエースを男達が取り囲み、いっせいに攻撃しようと腕を振り上げる。
「ふん」
エースはニヤリと笑うと、掴んでいた男達を投げ飛ばし、攻撃してくる男達を逆に殴り飛ばしていく。
「どこに行くってんだよい」
逃げようとする男達をマルコが蹴り飛ばす。
「あァ!手ェ出すなっつったろ!!」
エースが殴りながらマルコを振り返る。
「“手は”出してねーよい」
マルコはニヤリと笑った。
「ったく!」
エースもニヤリと笑った。
「く、狂ってやがる」
「強ェ」
男達がぽつりぽつりと呟く。
「貴方達はエース一人やるためにこんなに人数がいるのにね?」
○○はムッとして声を出す。
「うるせェ!!このアマ!!」
「調子に乗るんじゃねー!」
男達は○○を殴る。
「○○に手を出すんじゃねー!!!!」
いつの間にか大勢いた男達を倒して来たエースが○○を殴った男に掴みかかる。
「ヒィイ!!」
男は情けない声をあげる。
「楽に死ねると思うな」
エースは男を気絶しない程度に何度も殴る。
「エース!!」
○○が叫ぶ声に振り返る。
「○○!」
エースは○○を抱き締めてようやくホッとする。
「すまねェ。遅くなっちまったな」
エースがすまなそうに声を出す。
「ううん!ありがとう、来てくれて」
○○はギュッとエースをた抱き返す。
「くそっ!せっかくの可愛い顔に」
エースが痛みに赤くなる頬に手を這わす。
「っ!……お嫁行けなくなりそうだよね」
痛みに堪えながら○○はあははと笑った。
「大丈夫だ。ちゃんと俺が貰ってやるから」
エースが柔らかく笑い、目を細める。
「なっ!え?あ!いや!その!」
○○が思いきり狼狽える。
「だから、何も心配ない」
エースはゆっくりと○○に近付く。
「っ!!」
「あんたさえ居なければ!!!」
○○に思いきり体当たりした女が歪んだ顔で笑う。
エースがしっかりと片手で○○抱く。
逆の手にはナイフを手にした女の腕が握られている。
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