01
「なぁなぁ!エース!明日シャンクスの所行くだろ?」
ルフィは嬉しそうに義兄であるエースを振り返る。
「あー、明日は忙しいからパス」
エースはそれだけ言うと鞄を下ろす。
大学とバイトを行き来し、殆ど家には寝に帰って来ているだけだ。
「えー!!またかよ!シャンクスも●●も残念がるぞー!!」
ルフィが放つその名前だけでエースは息を飲む。
(はぁ、まだ全然諦めつかねー)
エースの小さくため息をつく。
「明日は忙しいんだよ。今度行くから言っといてくれ」
エースは「風呂」と一言残して自分の部屋のある二階へ向かう。
「また行かないのか?」
部屋に入るとサボが待っていた。
「帰ってたのかよ」
サボは大学入学と共に家を出た。
遠い大学に受かったのだ。
本人は独り暮らしは(金銭面で)迷惑がかかると辞退しようとしたが「本当に入りたかったら、俺を殴ってでも納得させろ」と言われ、ガープを殴って出ていった。
殴られたガープは嬉しそうだった。
「今日な。で?行かないのか?」
「……あァ」
エースは少しうんざりとした顔をした。
「そりゃ、失恋した相手に会いたくないってのは解るけどよ」
サボは苦笑いをした。
「……明日は合コンなんだと」
エースはため息をついた。
「へぇ!」
「失恋には新しい恋だ!とか抜かしやがってな。俺主役だから来いとか言われてな」
「良かったじゃないか!なぁ!俺も行きたい」
「はぁ?」
「良いだろ?」
「……聞いてみる」
エースはきらきらと輝く目に弱い。
メールを送るエース。
すぐに返信はあった。
「男が多いのは良いんじゃねーかだとよ」
エースはサボを見る。
「よしよし、明日は楽しもうぜ」
サボはエースの肩を組んで笑った。
「俺はサボ!エースの兄弟だ!宜しくな」
サボは上機嫌で笑う。
「やだカッコイイ!」
「当り!」
女性陣からはなかなか好評の様だ。
それでもエースはあまり興味は出なかった。
着飾った女達、化粧もし、スタイルも良い。
そんな中、一人場違いじゃないのかと言う女性がいた。
「□□○○です」
化粧っけもない。ジーパンに普通のシャツ。眼鏡。
一言で言うと地味。
エースもサボもそこにいる男達が敢えて選ばないであろう女性。
何故彼女がいるのか?
それは人数を見れば一目瞭然。
男性陣は昨日サボが行くと急に決まったのに女性陣と同じ人数。
ならば、きっと急に誘われたに違いない。
それでも○○は嫌な顔ひとつせずにニコニコと笑っていた。
時間が経つにつれ、盛り上がり、酔いが回ってきた。
男の一人が女性陣の服装を褒め始めたのである。
(あ、馬鹿)
エースはそんな事をぼんやりと考えた。
「○○ちゃんは、あー、いつもそう言うボーイッシュなのを?」
酔いながら最後の○○に話をふる。
「□□さんはいつもあーよ」
女の一人が猫なで声で男に擦り寄る。
他の女もクスクスと笑う。
(なんだ、当て馬か)
エースは気分悪く女達から興味が失せた。
「俺は良いと思うぜ」
それは隣のサボも一緒だったらしい。にこりとサボは笑った。
「でもさー!せっかくなら可愛い格好すれば良いじゃん!スカートとか」
男が特に深い考えがあって口にしたのではない。
女達もクスクスと笑う。
エースが切れかけた時、彼女はにこりと笑った。
「私は好きでもない男の前で綺麗でいようとは思わないの。好きな男の前だけ綺麗であれば良い」
さっきまでの彼女と同じ人かと疑う程に妖艶に見えた。
「そ、そっか!」
男は初めて自分の失態に気付いた。
○○はまたにこにこと元の顔に戻ると、飲み物に口をつけた。
また、盛り上がるテーブル。
しかし、○○はそれ以降笑うだけで自ら話に入ろうとはしなかった。
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