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「あれは……」

「あ?」

外回りをしていたマルコが反対側の歩道に自分が講師をしている授業を受講する学生○○の姿を見付けた。

「あれ?あのバイク、エースのじゃねーか?」

隣にいたサッチがマルコの視線を追い、そこを見る。

「そうだよい。で、あれ彼女だねい」

マルコは煙草をくわえる。

「火ィつけるなよ」

サッチに言われてジッポをしまう。

「じゃあ、あれが○○ちゃんか?あんなとこで何してんだ?」

サッチは不思議そうに見る。

「…………まさかと思うがここって赤髪ン家の近くだねい」

「おいおい、彼女置いてどこ行ってんだよ、あいつ」

サッチはケラケラと笑った。

○○の目の前に車が停まる。

「あ?」

「何だ?」

○○が無理矢理車に乗せられる。

「は?!」

「っ?!」

そして、車が走り去る。

「ナンバー見たかよい?」

「ーーーだ」

「同じだよい」

2人で同じ数字を言い合い、車道を横切る。

「あれ?マルコにサッチ。何してンだ?」

呑気な声と共にエースがバイクに近付いてくる。

「この、馬鹿!今までどこに行ってやがった!!?」

サッチが厳しい顔付きでエースに怒鳴る。

「どこって、ちょっと●●とこに」

「っのやろー!!」

「なんだよ?!」

サッチの怒りにエースは狼狽する。

「お前が他の女にうつつを抜かしてる間に□□が拐われたよい」

マルコが眉間にシワを寄せる。

「はぁ?!」

エースが眉間にシワを寄せる。

「ナンバーは見た。どうするよい?」

「っ!!」

マルコの人を刺すような真剣な目付きにエースは真実だと悟る。

「何だって、あいつが?」

「知らねーよ!俺らも反対側から見てたからな」

サッチが車道と反対側を指差す。

「電話!」

エースが慌てて携帯を取り出すと○○のナンバーを探す。


ーープルルル、プルルル


呼び出し音は感情の無い機械音。

「出ねェ」

エースはギリリと奥歯を噛む。

「どうするよ?」

サッチが厳しい顔付きで言う。

「どうするもなにも!!」


ーーピロロロ


エースの携帯が鳴る。
画面にはこの前携帯を触らせていた女。

「なんだ!今忙しいんだ」

『そんなに怒らないで?』

まるでそれが当たり前の様にクスクスと笑う女。

『今ね、○○って子と一緒なのね?』

『……』

『喋りなさいよ!』

『っんんっ!』

「○○!!!」

キツい女の声と共に鈍い殴る音。続けて聞き間違える事の無い彼女の呻き声。

『ね?』

「テメェ!!○○に何しやがる?!」

『ふふ、この子がね。貴方の近くばかりにいて、エースが迷惑してるから、ちょっと凝らしめようと思って』

艶やかな声から紡ぎ出される言葉にエースは肝を冷やす。

「どこにいる?!」

『大丈夫よ!ただ、他の男を紹介するだけ』

「テメェ!!!」

『でも、場所くらい教えましょうか?』

女は楽しそうに近くの古びた漁港の名前を言う。

「……○○に何かしてみろ」

エースの地を這う様な低い声。

『ふふ、まぁ、怖い』

そんなのもお構いなしに女は楽しそうに笑った。

「どうだった?!」

サッチが電話が切れたと同時に聞く。

「近くの漁港だと」

エースはヘルメットを被るとバイクのエンジンをかける。

「何してンだよ!?」

エースはヘルメットを被り、後ろに乗り込むマルコに怒鳴る。

「ほれ、急げよい。□□は俺の教え子だよい」

ニヤリと笑うマルコにエースはバイクを吹かす。

「サッチ、悪いが俺は直帰だい」

「了解!」

サッチはニヤリと笑った。

エースはバイクを漁港へと走らせた。

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