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「なに?あんな女がエースの彼女なの?」
エースと○○を見ていた女が眉間にシワを寄せながら言う。
「信じられない!私の方が絶対エースに似合ってるのに!」
女はギリリと歯を噛み締めた。
「お嬢さん、お困りかな?」
胡散臭い髭の男が声をかける。
「誰よ?あんた」
女は男を振り返る。
「いや、あの男には、隣の女よりお嬢さんの方がお似合いと言う意見に賛成でね」
男はニヤリと笑った。
「でしょ?貴方もそう思う?」
女はニヤリと笑った。
「ええ、あんな女、エースから離せば良い」
妙な煙の出る瓶を彼女に見せる。
「離す?」
ぼーっとして女は聞く。
「あァ、あの女からあの男を奪うんだ。あの女に他の男をあてがえば問題ないだろ?」
男の姿はうつろ。
「そ、うね。……あの女に別の……」
女は夢を見るように声を出す。
「ふふ、さぁ、わかったね?」
「ええ」
「それでは」
女がハッと目を覚ますと、そこには誰もいなかった。
「……え?今なにか?」
女は不思議そうに声を出す。
「まあ、良いわ」
女はニヤリと笑った。
「あれ?エースの家?」
○○はエースのバイクの後ろから降りた。
「おう!今日ジジイもルフィも居ないんだよ」
エースはバイクをしまいながら言う。
「あ、そうなんだ。あれ?サボくんは?」
「あいつは今は一人暮らし」
「そっか」
「ほら」
エースは鍵を開けて中に入る。
「お邪魔します」
○○は二回目となるエースの家に足を踏み入れた。
「先俺の部屋行ってて。飲み物とか持ってくから」
エースが二階を指差す。
「あ、うん。手伝う?」
「大丈夫だ」
エースは○○に笑いかけ、台所へと向かった。
○○は少し緊張しながら二階へ上がる。
そして、前に来たエースの部屋へと入る。
少し散らかってはいるが、綺麗に整頓されていた。
○○はどこに居ようか迷いながら、窓から外を見る。
(あれ?)
「持って来たぞー」
エースがお盆にコップとジュース、お菓子を持ってあらわれた。
「エース、あれ。って、あれ?」
○○が指差すが、誰もいなかった。
「どうした?」
エースが外を見るが、やはり誰もいない。
「……女の人がいたように見えたんだけど……」
「え?ホラー?」
「え?や!止めてよ!怖い事言うの!」
○○は嫌そうな顔をする。
「あはは!冗談だよ。嫌いなのか?幽霊とか」
エースがニヤリと笑う。
「そ、そりゃそうだよ!怖いもん! 」
○○はエースに文句を言う。
「大丈夫だって、俺が守ってやるから」
エースは○○のおでこに口付けながら、カーテンを閉める。
「ん?まだ昼間なのにどうしたの?」
○○は不思議そうにエースを見上げる。
「なんだ?○○は明るい方が良いのか?まァ、俺としてはその方が隅々まで見えて良いけどな」
エースはニヤリと笑う。
「え?……えぇ?!」
○○が顔を真っ赤にすると、エースは○○に口付ける。
「んっ!」
「○○」
エースは○○の体をベッドへと押し倒した。
「夕飯食うだろ?外に行くか」
エースの提案で2人は家を出る。
バイクを走らせて赤信号で停車中にエースがじっと何かを見ているのに気付いた。
○○はその目線の先を見る。
(あ…………)
そこにはシャンクスの妻●●が重そうに買い物袋を両手に持って歩いていた。
(もー)
○○は苦笑しながら、エースの背中を叩く。
そして、バイクを降りた。
「あ!おい!」
エースは慌てて道の端にバイクを停める。
「どうしたんだよ?」
エースは目のシールドを上にあげる。
「あれ!気になるんでしょ?」
○○が●●を指差す。
「………………いや」
エースは微妙な顔付きでぽつりと呟いた。
「嘘!エースは今嘘付きです」
○○はきっぱりと言う。
「手伝ってあげなよ。私、ここにいるから」
○○はにこりと笑い、ヘルメットを外す。
「………………悪ィ」
エースはエンジンを切る。
ヘルメットを外すと、バイクの上に置き、走って行った。
「ふふ、本当に好きだったんだなぁ」
それは現在進行形で。○○は胸にずきりと痛みを感じた。
もし、シャンクスが●●と別れる様な事があったとした、エースはどうするだろうか?
エースは●●に並び、荷物を奪うように取り上げる。
驚く●●はエースを見ると嬉しそうに笑った。
エースの顔は穏やかな笑みを浮かべる。
「…………勝てないかな」
○○は寂しそうに笑った。
「ねぇ」
急に声をかけられて慌てて振り返る。
どうやら車道側の車から話しかけられたらしい。
「はい?」
「急にごめんなさい?道を教えて欲しいのだけど」
車の中から美人な女の人が困った笑みを浮かべて聞いてきた。
「わ、私に解れば」
「ありがとう。あのね、漁港があるらしいんだけど……知ってる?」
「ああ!それなら」
○○はバイクから降りてヘルメットを置き、説明しようと近付く。
「乗って」
ニヤリと笑った女の車の後部座席から太い男の手で思いきり引っ張られ、車の中に引き摺り込まれた。
「なっ!!」
思いきり足を打ち、痛かったが、それどころではない。
「出して」
女が言うと車は出された。
(え、エース!!!)
人と言うものは簡単に幸せから恐怖へと堕ちられる。
「ありがとう!エース君、助かったわ」
「あんなに買い込むなよな。シャンクスがいる時で良いだろ?」
「だって、特売日だったの」
「あのなぁ」
「あ?お茶飲んでく?ケーキあるよ」
「いや、いい。彼女待たしてるから」
「っ!良かったね!」
「ああ!」
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