23

バイクの後ろに乗り、少し躊躇いがちに抱き締める。

そして、幕の張られた駐車場へ入る。

エンジンを停め、キーを抜く。

「…………あ、ヘルメットは?」

バイクから降りた○○は戸惑う気持ちを押さえ込み、エースに聞く。

「あ?あァ、持ってく」

エースは○○の分のヘルメットを受け取り、まとめて持つ。ヘルメット同士が静かな駐車場でコツンと音を立てた。

「…………来いよ。それとも、帰るか?」

エースは真剣な目をして手を差し伸べる。

「…………」

○○は迷いながらもその手を取った。

「わ、私。こう言う所初めてなんだけど」

○○は緊張のあまり、声がかれる。

「…………そうか」

静かに頷くと、2人は自動ドアをくぐる。
中には人気がない。

「どうすれば良いのかな?」

○○はエースを見ない様に聞く。

「このパネルがそれぞれの部屋の写真だ。光ってるのが空室で選べるやつ。暗いのが誰か入ってるか清掃中。どこが良い?」

エースはチラリと○○を見る。

「わ、わかんないけど。……あんまり高い部屋は……」

パネルにはランク別に料金が表示されている。
二種類の値段も書いてある。
休憩と宿泊。

「そうだな。まァこれで良いか」

エースが適当にパネルのボタンを押す。
すると、機械からレシートの様な紙が出てくる。
それをエースが持つ。
押したパネルの電気は消えた。

「で、エレベータでこの部屋番に行く」

エースを追いかける様にエレベータに乗る。
人気のない静かなロビー。そして、廊下。
エレベータの中では2人共無言で、ただ機械の音だけが響いた。

「あ、部屋の番号光ってる」

○○はエレベータから降りてすぐに気付いた。

「そうだな。行くぞ」

○○は頷いて、エースに続く。

先にエースが部屋に入る。
そして、さっさと入ると何やらついていたらしいテレビを消した。

「あ、ねぇ、カギは?」

「自動でかかるやつみたいだな」

「ふーん」


ーーカチ


「あ、閉まった!」

○○が試しにガチャガチャとしたが、動かなかった。

「この、自動支払機に金を入れないと開かない」

エースは玄関近くにある壁に埋め込まれた小さな自動販売機の様な機械をコツンと叩いた。

「へ、へー。何か犯罪チックだね」

○○は固い笑顔を見せる。

「……そうだな。こう言う所に連れ込まれたらトイレかバスルームに鍵がかかるから、そこから自分の携帯で助け呼ぶしかねェな」

エースは考えながら声を出す。

「…………そんな事、ありませんように」

○○は少し恐怖を感じた。

「そうだな。で?……いつまでそこにいるつもりだ?」

エースは真顔で聞いてくる。

「え?あ!そ、そうだね」

○○はそこでようやく靴を脱いであがった。

「うわっ!意外とお洒落!」

部屋の中には大きなベッドがドンッと置いてあったが、お洒落な内装に驚いた。
しかも、大きなテレビや冷蔵庫、ポットのほか、怪しげな自動販売機もあった。

「…………何か凄いね」

○○はドキドキと嫌でも心臓が激しく鼓動する音を感じた。

「…………怖くねェよ」

エースが低い声を出しながら、後ろから抱き付いた。

「っ!」

びくりと体が震える。

「大丈夫だ。俺に任せておけ」

エースは○○を自分の方に向かせた。

「あ、あの。……い、痛くしないで……ね?」

○○は恐る恐るエースを見上げる。

「………………それは解んねェけど、優しくはする」

エースは苦笑しながら○○の髪を耳にかけた。

「…………っ!は、初めてなんだよね、私」

「そいつは、ラッキーだな」

「あの!」

「少し黙れ」

エースはそう言うと余裕が無さそうに○○に口付けた。

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