16

「っ!」

必死に声を出さぬ様にエースの口付けに耐える○○。

もう、どれほどの時間キスをされているか分からない。終わる気配もない。

(もー、ダメ……)

○○はずるずると足の力が抜け、その場に座り込む。
その拍子にエースの手も離れた。

○○は力無く、その場に項垂れた。

「○○」

エースが呼ぶのに○○の肩がびくりと揺れる。
それでも顔を挙げられない。

「○○……」

エースは切なそうに声を出すと、背中と膝の裏に両手を添えて立ち上がる。

「え?や!」

○○を横抱きにし、歩く。

「え?ちょっ!やだ!」

○○はエースがどこに向かっているのかを理解すると暴れ出す。

「え、エース!」

ぽすんと言う音と共に落とされたのは先程までエースが寝ていたベッド。

「もう、無理だ」

エースは○○をベッドに押し倒すと馬乗りになる。

「は?いや!止めて!ちょっ!どこ触って!!」

○○が騒ぎ出すのを易々と封じ込めるエース。

「もう、我慢なんか出来ねェ」

ニヤリと笑うエースに不覚にも胸ときめかせる○○。




ーーバタン


勢い良く開けられる扉。

「この糞ガキがぁぁぁぁ!!!!」

ガープの強烈な拳が○○の上からエースを吹き飛ばす。

その様子を唖然と見る○○。頭は状況に追い付いていない。

「っにするんだよ!!糞ジジィ!!!」

エースはたんこぶを作りながらガープを睨み付ける。

「こんな良いお嬢さんを!!時と場合と場所を考えろ!」

ガープが怒鳴る。

その内容に○○は半泣きになり、ドアから覗くサボとルフィを見る。

「ごめん!ここの壁薄いんだよ!」

サボが片手で謝るポーズ。

「良かったな!エース」

ルフィは嬉しそうににししと笑う。

「っ!!!う、うえーーん!!!」

○○の顔はみるみる真っ赤に染まり、泣きながら部屋を出る。

「あ!○○!!」

エースが慌てて追いかける。

「夜遅いんじゃ!ちゃんと送れよ!」

ガープが叫ぶ。

「気を付けてな○○!」

サボが楽しそうに手を振る。

「また来いよ!○○!」

ルフィがにししと笑う。

「っ!お、お邪魔しました!」

○○は泣きながらも必死に挨拶を済ませる。

「ま、待て!送る!」

エースも慌てて○○を追いかけた。







2人は並んで駅までの道を歩く。

「あのよ、明日暇か?」

エースは落ち着いた○○に声をかける。

「明日?」

「土曜日だし、どこか行かないか?」

エースはにこりと笑う。

「え?」

「これで俺達ちゃんと、その、恋人同士だろ?」

エースの頬が心なしか赤くなる。

「うん」

○○は頷いた。

「だからよ、デートしようぜ」

エースはにかりと笑う。

「うん!」

○○は嬉しそうに頷いた。
エースはそれに幸せを感じながら見つめる。


ーーどーわどーなつーのどー


「ん?電話?はい」

○○は反射的に電話に出る。

『あ!○○?明日ーー駅に10時集合な!』

電話の向こうからは明るいシャチの声。

「え?あ!動物園!!」

○○は大声を出す。

『んだよ!やっぱり忘れてたか!まぁ、良いや!来いよ!』


ーーぷっプープー


「……忘れてた」

一方的に切られた電話に○○は呆然とエースを見上げる。

「ほっとけ」

エースはムッと怒る様に言う。

「で、でも!ロー君も怖いんでしょ?」

○○はあわわわと声を出す。

「俺がいるから大丈夫だ」

エースはニヤリと笑う。

「…………ねぇ、エース。私、エースと一緒に動物園行きたいな」

○○はエースを下から見上げる。

「っ!!」

エースは嫌そうな顔だが色は赤い。

「ねぇ?一応みんなとの約束が先だったし。エースも行こう?」

「わかった」

「ありがとう!エース!」

○○は嬉しそうに笑った。






「……やっぱり今抱きたい」

「……も、門限あるからダメ!」

「……」

「……」

「……」

「……ごめんね」

「……はぁ。俺、あんま待てない」

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