13

「って、事は○○はこの前のエースってのと付き合う事になったと?」

ショートカットの美人が言う。

「うん。でも」

○○はひっくと泣く。

「痴漢よね?!許せない!」

ロングの優等生が怒る。

「怖……かった」

○○はしくしくと泣く。
付き合った経験など皆無に等しい○○はどうして良いかわからずにめそめそと泣く。

「よしよし」

ショートカットの美人が○○の頭を撫でた。

「でも、好きなの?」

「…………うん」

優等生の言葉に頷いた。

「なら、ちゃんと口で言わなきゃ解らないわよ」

優しく諭す様に言う。

「……うん」

○○は頷いた。

「なら、行って来たら?ほら」

ショートカットの美人がドアを指差す。

「……よ、よう」

エースは気まずそうにドアで軽く手を挙げる。

「……え、エース……」

○○はエースを見る。

「あ!エースじゃん!何してるの?あ!私に会いに来たの?」

学科の中でも美人の部類に入る派手な美女がエースの前に出る。

「あ?んな訳ャねーだろ」

エースは途端に面倒臭そうに美女を手で払う。

『本命がいても他に女の子と』

「……ごめん、私帰る」

「え?ちょっと○○?」

友達の声を無視する様に、授業の終わった教室のエースとは逆側のドアから出る。

「あ!待て!」

「ちょっ!エース!今日暇?」

美女が甘える様にエースの腕に絡み付く。

「うるせェ!!!」

エースはその手を振りほどき、○○を追いかける。





「○○!」

ようやく追い付いた駅への道。

「や!離して!」

○○はエースの掴んだ手を振り払う。

「悪かった!もう授業中とか逃げられない時に触ったりしねー!!」

エースは○○に必死で言う。

「だ、だからそんか大きな声で」

○○は真っ赤な顔でエースを睨む。

「仕方ねーだろ!俺、お前の事好きなんだよ!」

「っ!」

エースのストレートな言葉に○○はどぎまぎとする。

「ちょ、ちょっとこっち!」

○○はあまりにも人が多いので、近くの公園へ避難する。



平日の昼間、人は誰もいない。

「なァ、機嫌直してくれよ!」

エースは頭をかきながら言う。

「…………もう、しない?」

「…………たぶん」

「…………たぶん?」

「だって!俺お前が好きなんだよ!隣にいたら触りたくなるだろ!」

エースは真面目に声を出す。

「え?あ……。じゃあ隣の席に座らない」

「却下だ」

「えぇ?!」

○○の提案にきっぱり否定するエース。

「じゃ、じゃあ。あの、私以外の女の子と遊んで欲しくないなーなんて……」

○○は言ってから真っ赤になる。

「おっ!嫉妬か?」

「いや、噂を色々」

「噂?」

エースは嬉しそうな顔から一変して、眉間にシワを寄せた。

「え?いや!ごめ」

「どんな噂だ」

エースは無表情に言う。

「……あの、エースは超不良で、女の子を取っ替え引っ替えで、ほ、本命がいても他に女の子と遊ぶとか。良く不良に絡まれるとか、覚醒剤組織を壊滅させたとか、お父さんが犯罪者とか?」

○○は諦めた様に言う。

「………………それ聞いてどうだった?」

「え?」

「どう思った?」

エースは無表情に聞く。

「え?そりゃ、嫌だよ?本当だったら」

○○の頭の中は「本命がいても他に女の子と」と言うフレーズ。
なので、素直に言う。

「…………そうか。なら、良い」

エースは無表情のまま立ち上がる。

「その噂ほとんど正解だよ。悪かったな。今まで」

エースはそれだけ言うと踵を返した。

「え?」

○○は慌ててエースを追う。

「付き合ってくれってのは忘れて良い」

エースはそう振り返らずに言う。

「え……あ!」

○○はそれだけ声を出すのが精一杯だった。

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