12
朝イチのマルコの授業を受ける為、エースは軽い足取りで大学へ向かう。
始業時間少し前に入ると、人数は相変わらずあまりいない。
くるりと教室を見回すと、廊下側の真ん中から少し前の席に○○が座っていた。
着いたばかりなのか、鞄から必要な物を出している所だった。
エースはそちらに足を向けて、○○の隣に腰を下ろす。
長机、長椅子の教室なので、○○は驚いて隣を見る。
「エース君?!びっくりした!」
○○は本当に驚いた様で、不審者を見る目からホッとした目になる。
「同じ授業取ってたんだよ」
「え?知らなかった」
エースの言葉に○○は驚く。
「俺も前の授業から」
エースはクスリと笑った。
「っ!そ、そうなんだ」
○○はエースの笑顔にカッと赤くなり、慌てて顔を反らした。
「なんだよ?」
「な、なんでも」
「……ははぁーん」
エースはニヤリとして○○の耳に口を寄せる。
「何思い出してるんだよ、やらしー」
「っ?!」
エースの低い艶のある声に○○は耳を押さえて距離を置く。
しかし、長椅子なので、エースは更に距離を詰める。
「逃げるなよ」
エースは実に楽しそうに笑った。
「っ!か、からかわないでよ!」
○○が怒ってエースを押し退けると、あっさり引いた。
「そう言や、面白いよ、ゲーム」
エースはにかりと笑った。
「え?あ!うん!でしょ?」
○○は嬉しそうに笑う。
「ビクトールとの共通点見付けた」
「え?」
○○はキョトンとする。
「食い逃げ」
「ダメじゃん!!」
○○は思わず突っ込む。
「あはは、冗談だ」
「本当?」
「あ、マルコ来た」
「え?」
エースは前を向きドアを指差す。
ずいぶん親しい言い方に驚くが、男子などそんなものかと思った。
マルコがエースと○○を見て一瞬驚いた顔をしたが、またいつもの眠そうな顔になる。
授業が始まって30分。
○○は違和感を感じる。
隣のエースを見ても特に変わった様子は無く、真面目に授業を受けている。
(左利きだっけ?)
左側に座るエースは左手でペンを持っていた。
(しかし、近くないか?)
○○がエースから距離を取ろうと右に少しお尻を動かす。
(っ!!!)
思わず声を出しそうになる。
違和感の正体は勿論、エース。
彼は○○に体を擦り寄せ、右手は○○の背中を這っていた。
後ろには人はいない。
いたとしても、背もたれで見れない位置。
○○は少し怖くて、恥ずかしい。そんな思いを感じていた。
○○が授業に集中しようとすると、エースの手はそのまま○○の右脇腹まで回る。
「っ!」
危うく声を出しそうになり、慌ててエースを睨むが、彼は右手以外真面目に授業を受けている。
○○が何とか授業に集中しようとすると、エースの手は無遠慮に○○のシャツの中に入り込む。
「ーーー!」
○○は顔を真っ赤にして涙目でそれに耐えた。
ーーキーンコーンカーンコーン
「あー終わった!」
エースはうーんと背伸びをする。
○○は鞄に物を乱暴に詰める。
「なぁ、○○、これから。……○○?」
エースは不思議そうに立ち上がる○○を見上げる。
その顔を見てギョッとする。
「エースなんて、知らない!!」
○○は今にも泣きそうな真っ赤な顔で教室から走り去った。
「え?!○○?!」
エースは困った顔でそれを見送る。
「な、何故?!」
ーーガツン
「何故じゃねーよい!この痴漢野郎!!!」
マルコが教科書で思いきりエースの頭を叩いた。
さすがのエースも痛みでしゃがみ込んだ。
「っ!!!なにしやがる!このパイナップル?!」
「お前は馬鹿かい?!」
マルコが低い声で怒る。
「な、なんだよ」
「□□は今までお前の付き合った軽い女じゃないんだよい!!」
マルコの言葉にエースはギョッとする。
「明らかに嫌がってたよい」
「そ、そうたのか」
エースはショックを受ける。
「だって、すっげーすべすべで!」
ーーガツン
マルコはもう一度エースに教科書を叩き込む。
「馬鹿だねい!謝って来いよい!」
「ど、どうしたの?○○?!」
「え、エースがぁ!!!」
「え?エース?」
「うえーん!!」
「あぁ、よしよし」
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