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「エースって、ポートガス・D・エースの事?!って言ったらあれよね?」
他学部の友達が声をあげた。
「超不良」
「不良?」
○○は不思議そうに声をあげる。
友達に「エースって人知ってる?」と聞いたのだ。
「うん!良く不良に絡まれる!しかも負けなし!」
「へ、へぇ」
「確か、ヤクザとも繋がりがあるとか」
「あるの?」
「ないとか」
「どっち」
○○は苦笑する。
「前に覚醒剤を売り捌いてた組織を一網打尽にしたとか!」
「え?!」
「え?ボロボロに倒されたって聞いたよ、私」
違う友達が声を出す。
「で、でも、倒すなら良いじゃない?買ってるとか売ってるじゃないし」
○○はエースを庇うように言う。
「でも、一般人じゃない事は確かよね!」
「その事件の時に赤い髪の左目に三本傷が入った人と戦ったとか!」
(赤い……髪?)
○○はどきりとした。
(それってシャンクスさんの事?)
○○はドキドキと皆を見る。
「あ!後やっぱり女関係じゃない?」
「女?」
どきりと○○は言う。
「うん!いくら不良でも、あの容姿でしょ?背も高いし!結構使い捨てらしいよ」
「つ、使い捨て?」
「噂によると、彼女はいないって。一夜限りの関係って奴でしょ」
「「「きゃー」」」
友達達は悲鳴をあげて笑った。
「しかも!中には年上とかモデルさんとか芸能人とか!!」
「えぇ?!」
「凄い!!」
○○はあまりの話にクラクラと頭を回す。
(わ、私は何て言う人と……)
「本当にいなかったのかな?本命」
○○はぽつりと呟いた。
「あれじゃない?一人じゃ満足しないってやつ!」
「本命がいても他にとか?」
「そうそう!まぁ、勝手な想像だけど!」
女子達は盛り上がる。
「それならさ!あの医学部のトラファルガー・ローってのもそうでしょ?」
「うんうん!あっちは笑顔が無い分あれだよね」
「何か、ヤバイ人と繋がってるらしいよ!」
「なにそれ?」
「ヤクザとか?!」
「「「えー?!」」」
怖ーい。と盛り上がる。
「そう言えば、これは本当に噂だけど」
友達の一人が改まった。
「エースのお父さんって犯罪者だったらしいよ!」
「え?!」
「何か、会社も潰れたとか!」
「そ、そうなの?」
「大変だったんだね」
「「「はぁ?」」」
いっせいに○○を振り返る。
「え?だって、そう言う事は、辛い思いしたんじゃない?」
○○はエースを心配する。
「……でもね」
「イケメンでもパスかな?」
「言い寄られたらやるの?」
「一回なら」
「「最低ー!!」」
キャハハと友達達の笑い声が遠くに聞こえた。
○○は家に帰り、食事もそこそこに風呂に入って自室のベッドに寝転がる。
「…………凄い噂ばっかりだった」
いつもの仲良しではなく、噂好きな他学部の友達に聞いたのが間違いだったのか、好き勝手な噂ばかりだった。
「……本命がいても……か」
○○は少し不安になる。
自分の性格上、かなり一途になってしまうので、自分の気持ちがエースに取って重荷になってしまうかもしれない。
そうしたら、自分ばかり好きでエースは他に女の子と……
そこまで考えて胸が重く冷たくなるのを感じた。
「…………無理だ。私には耐えられない」
○○ははぁとため息をついた。
ーーどーはどーなつーのどー
携帯が着信を知らせる。
画面を見ると、頭を悩ませる張本人。
「も、もしもし!」
○○は姿勢を正すとすぐに出た。
『何で何も言わずに帰んだよ』
低い声がした。
(お、怒ってる!!)
「え?あ!ご、ごめんなさい」
○○は慌てて謝罪の言葉を口にする。
『俺、待ってたのに……』
エースの声は怒ってると言うよりも、拗ねているようだ。
「ご、ご、ごめんなさい」
○○はしゅんと落ち込む。
『…………許す』
「あ、ありがとう!」
○○は嬉しそうに声を弾ませた。
『明日は一緒に帰るぞ』
「えっと……」
『………………』
「……わかった」
○○は諦めた様に頷いた。
『エース!風呂!』『はいよ!』
『悪い、切るな』
「うん。明日ね」
『あァ、お休み』
「お休み、なさい」
○○は電話を切る。
「っ!!!なに着よう?!」
○○はわたわたと服を決め始めた。
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