08
日曜日の夜、バイトを終えて帰ってきて、家族と食事をして、風呂に入ってベッドに寝転んだ。
「…………不毛な恋なのね」
○○はぽつりと呟いた。
向こうは自分達より年上で、しかも結婚もしている。
そんな人に恋をし続けてエースは辛くないのだろうか?
「そんな事ないよね」
だから、諦める為に必死で新しい恋を見付けようとしているのだ。
「……だからって、私になる?やっぱりただの冷やかしか。それとも気紛れか」
どちらにしろ、自分はエースを好きにならない様にしようと心に決めた。
「だって、怖いもん。そう言う事目的だし」
○○はため息をついた。
「エース君にとってはホテル行くとか普通の事なんだろうなぁ」
○○は携帯を手に取る。
あれから入れ直した「ポートガス・D・エース」の文字。
「……はぁ」
○○はぽいと携帯を投げると電気を消した。
翌日、午後の授業なので、のんびりと支度をして出掛ける。
お昼を買うために生協に行く。
サンドイッチを選んでいると「あー!」と言う声が響く。
「この前の!携帯本当にありがとうございました!」
シャチが騒ぐように○○に近付いた。
「いえ!」
○○はクスクスと笑った。
何だか可愛らしい子だ。
「おい、シャチうるさいぞ」
「ペンギン!この人がこの前の携帯の!」
ペンギンと呼ばれた男は○○を見た。
「友人が世話になった」
ペンギンは紳士的に頭を下げる。
「いえいえ。本当に大した事してないですから」
○○は困った様に笑った。
「あ!これ昼飯?買ってやるよ!」
「え?いや!」
「レジ混んでるからな!ペンギン!先にキャプテンの所に行ってくれ」
シャチは籠いっぱいの弁当やパンやおにぎりを抱えてレジに向かった。
「え?いや、悪いです!」
「気にするな」
ペンギンはぽんと○○の背中を叩いて連れていく。
(ひ、ひぇぇぇ)
有無を言わさない態度に○○は内心冷や汗を滴ながら引きずられるようにペンギンに着いていく。
「キャプテン」
「御苦労さん。ん?」
ペンギンが入った部屋はサークル室の様だ。今は中にローだけがいた。
「お前は確か……」
ローはじろりと○○を見る。
(こ、怖い!!!)
○○は困った様にキョロキョロと目線を浮かせた。
「俺はトラファルガー・ロー。あんたは?」
ローはくすりとも笑わない顔で名乗る。
「え?あ、□□○○です」
○○はぺこりと頭を下げた。
「へ、宜しくな○○」
ニヤリと笑うローの顔に○○は冷や汗をかきながら「宜しく」とだけ答えた。
「たっだいまー!買ってきたぜー!!」
明るい声でシャチが部屋に入って来た。
「はい、キャプテン!これな。後はペンギンとー、俺とー!はい!えーっと名前は?」
シャチはにこにこと聞く。
「あ、」
「○○だと」
○○が答えるより先にローが答えた。
「○○ちゃんか!ほら!これな!後、飲み物何にする?コーラとブラックコーヒーとカフェオレとイチゴミルク!!」
シャチはにこにこと聞く。
「え?コーヒー以外なら」
○○は椅子に腰を下ろした。(半場無理矢理)
「はい!イチゴミルク!!!」
シャチはご機嫌でイチゴミルクを渡した。
何だかんだで楽しく昼食を取る。
思ったほど怖くはなかった。
「○○も今度行こうぜ!」
「動物園?行きたい!」
「よし!なら来週の土曜日だ!」
「バイト……」
「休め」
「キャプテン!賛成!」
「え?いやいや」
「休め」
「……」
「こうなったキャプテンには逆らわない方が良いぞ」
「……聞いてみます」
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