02

すぐにビクトールの後を追ったが、その姿はどこにもなかった。

「はぁ、はぁ、レオナの所かな?」

エムは酒場へと全力で走った。



「ビクトール?そう言や、まだ来てないねぇ」

レオナは妖艶に笑いながら言う。

「そ、そう?なら、来たら私が探してたって言って!」

それだけを言うとエムは慌ただしく酒場から走り去った。

「おやおや、あんなに必死になって。ビクトールも愛されてるねぇ」

クスクスと笑いながらレオナはキセルを吹かした。




エムはビクトールのいそうな所をくまなく探した。

「はぁ……どこにもいない……」

レストランや風呂場、怖かったが軍師のいる所にまで行ったがビクトールはいなかった。

「……部屋かな?」

エムは戸惑いながらビクトールの部屋へと足を向けた。




ーーコンコン


「おー、誰だー?」

遠慮がちにドアを叩くといつものビクトールの声がした。

「わ、私!エム!!」

ホッとしながらも、胸がドキドキと鳴った。


ーーガチャ


少しの間があってから扉が開いた。

「どうした?」

ビクトールはいつもの飄々とした顔でエムを見た。

「ビクトールに会いに来たの!」

「あはは!嬉しい事言ってくれるな!まぁ、入れ」

ビクトールは笑いながら体をずらした。

「お邪魔しまーす」

エムは部屋に入ると椅子に腰を下ろした。

「もう良いのか?」

「え?」

「フリック」

「っ!!」

エムはビクトールの言葉に立ち上がる。

「お前はまだ若いしな。フリックの方が合ってるんじゃないか?」

ビクトールはさも当然と言う様に声を出す。

「俺みたいやのよりフリックは良いぞ?ちょっと面倒臭せぇけど、あの面構えだしな!…………って?え?!」

笑い飛ばしながら言うビクトールがふとエムの顔を見ると、エムは静かに涙を流していた。

「お、おい、泣くなって」

ビクトールは珍しくおろおろとする。

「び、ビクトールは私じゃ嫌かもしれないけど」

「そ、そんな事はねぇよ?」

「私はビクトールが好きなの!ビクトールじゃなきゃ嫌なの!!ビクトールしかいらないの!!!」

エムはキッとビクトールを涙目で睨む。

「いや、あのな」

「ビクトール!!」

「お、おう!」

ビクトールは思わず姿勢を正した。

「私は別れる気なんてないわよ!!」

エムの言葉にビクトールは優しい笑顔で「おう」 とだけ頷いた。

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