01

エムが初めてビクトールに出会ったのはエムがモンスターに襲われていた時に助けたのが最初だ。

エムがビクトールに一目惚れをして、努力に努力を重ねてエムから告白をして付き合うようになったのだ。

「……はぁ」

エムは洗濯物を干しながらため息を吐いた。
空は澄みきっていて気持ちが良かったが、エムの表情は晴れなかった。

「何不機嫌そうな顔してるんだ?」

たまたま通りかかったフリックが声をかけてきた。

「フリック!ビクトールは?」

エムがフリックの顔を見てビクトールの事を聞く。

「まだだ。シュウと話してる」

「なーんだ……」

エムはつまらなそうにショボンとすると洗濯かごを持ち上げる。

「また偉く塞ぎ込んでるな」

フリックはやれやれとため息をつく。

「ねぇ、フリック」

「なんだよ」

「ビクトールは私と付き合ってて楽しいと思う?」

エムは少し思い詰め様にフリックを見上げた。

「……そりゃそうだろ」

フリックは少し呆れ気味に頷いた。

「……ねぇ、フリック」

「なんだよ」

「遠征には女の人も行くわよ?」

エムはぐぐっとフリックに近付いた。

「そりゃな」

フリックは気圧されながら頷いた。

「うう、心配」

「なにがだ?」

フリックは再び呆れ顔になる。

「だってさ!ビクトールって強いじゃない?それにカッコイイし!他の女の人が放って置かないでしょ?女の人も綺麗な人多いし!……ビクトールが私と付き合ったの後悔してたりして……」

エムは興奮気味に話していたが、途中でしょんぼりとして行った。

「ないだろ」

「何でそんな事が言い切れるのよ?!」

フリックのキッパリとした言葉にエムが食って掛かる。

「何でも何もお前ら付き合ってんだろ?それともあいつが信用出来ないのか?」

フリックは呆れながらエムを見る。

「……むしろ信用出来ないのは私の方」

「は?」

「だって、私ばかりがビクトールが好きなんだもん」

エムは小さく呟いた。

「のろけか?」

「っ!!ち、違っ!」

エムは顔を赤くしてフリックを睨む。

「そんなに不安なら自分で聞いてみろ」

フリックはやれやれと城の方を指差した。

「……そ、そうだね!うん!じゃあ、行ってみる!」

エムは気合いを入れた。

「そうしろ」

「っわぁぁ!!!」

「っ!!」

エムは石があるのに気付かずに乗り上げ、バランスを崩した。
フリックの服をとっさに掴む。
フリックはエムの頭の落下地点に丁度石があるのに気付いた。
フリックはエムの後頭部を手で庇いながらエムの上に倒れ込んだ。

「痛たた……」

「大丈夫か?」

フリックが声をかける。

「っ!!う、うん」

普段フリックの事など気に止めないが、さすがにイケメン顔が間近にあり、顔に熱が集まる。

「おーい、エムいるのかー?」

がさりとタイミング悪くビクトールが現れた。

「びくと」

「あー、悪い、お取り込み中か。じゃあ、後でな」

ビクトールはニヤリと笑うとそのまま姿を消した。
まるでフリックがエムを押し倒した様に見えたのだ。

「違う!ビクトール!!!」

固まるエムにフリックが慌てて声をかける。

「お前も早く行け!」

フリックが慌てながらエムをけしかけた。

「っ!!そうだよ!ごめん!フリック!」

エムは慌てて立ち上がった。

「あぁ、最悪だ」

フリックは走り去ったエムの方を見てから頭を抱えた。

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