03
それから数年後、ローは黎と同じ病院で働くようになった。
「トラファルガー先生!」
黎がカルテを持ってローの部屋まで来る。
「何だ?」
ローは面倒くさそうに群がる他のナース達を押し退けて黎に向き直る。
「201号室の患者さんのカルテ、内科の先生が持ってけって」
黎は「はい」っとカルテをローに渡す。
その間無下にされたナース達が不満げに黎を睨む。
「ん」
「って、何してるの?」
黎は自分の腰に回されたローの手をぎょっと見た。
「スキンシップ」
「仕事場では止めてください。ほら、他のナースが引いてる」
黎は仕方なくナースの方を指差した。
「お前ら邪魔だ」
ローは不機嫌そうにナース達を睨み付けた。
「違うでしょ!すみません。失礼しました!」
黎はローから離れるとナース達にペコリと頭を下げた。
「うちの旦那の事を宜しくお願いしますね!」
「……」
黎の笑顔にナース達は固まった。
「くくく、あいつ、あれで無自覚だから面白れェな」
ローは楽しそうに喉で笑った。
その笑顔にナース達は心を奪われていた。
ローの言う通り黎はナース達に牽制をした訳でもなく、ただ事実としての挨拶をしただけだった。
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