01

最初はただのクラスメートだった。




中学生の時、同じクラスになったのが初めての出会いだった。

それは本当に偶然で、たまたまローの欲しいレコードを亡き父が持っていたのを思い出したのだ。

そして、帰りに家に取りに来る事になった。



「ただいまー!ちょっと待ってて」

「あァ」

黎が声をかけて玄関へと入る。ローは大人しく玄関ドアの内側で待っていた。二階へ通じる階段を黎がかけ上がる。

「黎!!あら?お友達?」

リビングらしい扉から女性が出てきた。黎に似ているとローは思った。
ローは軽く顎を引いた。

「こんにちは、あの子学校ではどう?」

にこにこと話す母親はいかにも嬉しそうだった。

「トラファルガー君、お待たせ」

黎はレコードを抱えて降りてきた。

「黎、それが終わったら良い?」

「ん?うん」

母親に言われ、黎が頷くとリビングのドアが再び開いて男が出てきた。

「やぁ、君が黎ちゃんかい?」

男は人の良さそうな顔でにこりと黎を見た。

「?」

黎は知らない男の顔に不思議そうにした。

「あのね、母さんこの人と再婚しようと思うの」

「え……?」

母親の言葉に黎は強い衝撃を覚えた。

「あなたも大きくなったし、そろそろ自分の幸せも考えたくって……」

母親の困った、しかし嬉しそうな顔を見て黎は複雑そうに男を見た。

「君のお父さんになるのを許してくれるかな?」

男も困ったように笑った。

「…………と、トラファルガー君に迷惑だよ、来客中に……」

黎は否定も肯定も出来ずに家の外へ飛び出した。

「黎!!」

母親の叫ぶ声を聞いてからローはゆっくりと玄関ドアを開いた。

「トラファルガー君。ごめんなさい、黎を頼める?」

母親の声にローが立ち止まる。

「あの子、父親の事が大好きだったから……」

母親の涙にローは小さく頷いた。






「ひっく……」

「勝手に置いてくな、馬鹿」

公園で泣いていた黎を見付けて、ローが近付いた。

「ご、ごめんなざい」

黎は泣きながらローを見た。

「ひでェ面構えだな」

ローはニヤリと笑った。

「うう、お母さんが今まで私を苦労して育ててくれた事は知ってるの。でも……お父さんの魂はどうなるの?お母さんが思ってあげなくなったら?」

泣きながら黎は声を出した。

「魂なんざ、初めからねェよ。あるならお前が忘れなきゃ良いだろ」

ローは冷めた声を出した。

「……」

「別にお前の親父を好きだったのは母親だけじゃねェだろ?それに、母親が忘れる訳じゃねェ」

ローは淡々と言葉を紡いだ。

「…………そっか」

黎は頷いた。

「俺には親はいねェがお前には3人いる事になるだろ。なら、良かったな」

ローの顔を黎は眩しそうに見た。

「…………うん」

黎は頷いた。

「なら、このレコードは借りる」

ローは黎の手からレコードを取ると立ち上がる。

「トラファルガー君は」

「あ?」

ローは振り返る。

「親がいないの?」

黎はローを見上げた。

「いねェな。今いる所も早く出てェ」

ローは低く頷いた。

「寂しくない?」

「初めからいねェから、知らない」

ローは淡々と言葉を紡いだ。

「そっか」

「なァ」

ローは黎に近付いた。

「?」

「お前、俺の側を離れるな」

「は?」

ローの言葉の意味が分からず間抜けな声が黎の口から漏れた。

「俺に家族ってのを教えろ」

「んー?ん!良いよ!」

黎はよく分からずに頷いた。

「そうか。なら、この先ずっと一緒だからな」

「うん!宜しくね!トラファルガー君!」

「お前もトラファルガーだろ」

「?」

ローの言う意味は理解しづらい。

「家族になるんだ。当たり前だろ。ローで良い」

「??え、えーっと、ロー君?」

黎が名前で呼ぶとローは嬉しそうにニヤリと笑った。

「宜しくな、黎」

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