年下の彼7
「見せ付けてくれるじゃないの」
一緒に暮らし出して数週間。
大分お互いに生活に慣れてきた。
甘い新婚生活とは行かないまでも、かなり仲良くやっていた。
たまには外で食べようと誘うエースに○○が頷いてハンバーグ店で食事をした帰りの事だった。
2人の前に現れたのは○○の上司で彼女に惚れている男、クザン。
彼は不機嫌そうにエースを睨みながら冒頭の言葉を口にした。
「クザン本部長。こんばんは」
○○は面倒臭さを押し殺してにこりと微笑んだ。
「やァ、○○ちゃん」
クザンはだらけながらも挨拶を返した。
「なんだ?テメェ」
エースは思いきりクザンを睨み返す。
「年上への口の聞き方がなってねェな。ガープさんには世話になったが、今は関係ないよな?エース君よ」
クザンは高い所からエースを見下ろした。
「く、クザンさん!こんな所で今日は?お仕事ですか?」
○○はエースを庇うようにクザンに話しかけた。
「んー?君に会いに来たんだよね」
クザンはバラの花束を差し出した。
「そんな男とは離婚して俺と結婚しちゃいなさい」
「…………」
クザンの言葉と行動に思わず固まる○○。
頭の中では「クザンとバラとか似合わない!」「え?警察上層部が離婚促す?」などなど突っ込みをしていたが、驚き過ぎて口からは何も出なかった。
「おい!いい加減にしろ!オッサン!!」
エースは怒りに任せてクザンの服を掴む。
「お前にゃ関係ないでしょ?」
クザンは冷たい目をエースに向ける。
「関係ないってなんだ!こいつの夫は俺だ!」
エースはクザンを睨み上げた。
「それが何?お子さまには関係ないでしょ?」
クザンはアッサリと声を出す。
「は?フザケン」
「エース!」
○○はエースを止めた。
「何で止めるんだよ!」
エースは○○を怒りのまま振り返る。
「相手が悪すぎる。冷静になれないならすぐに終わるわ」
○○はエースをクザンから離した。
「クザンさん」
「はい?」
「クザンさんの申し出は受けられません」
「何故?」
クザンは冷静に○○を見る。
「私はエースと結婚をして夫婦です。今の関係は嫌な事でも無理矢理続けている事でもありません」
「○○……」
○○の言葉にエースはホッとする。
「じゃあ、○○ちゃんはこいつの事が好きなの?」
クザンはエースを指差す。
「…………」
「…………」
エースと○○は数秒見つめ合う。
「…………はい」
○○は優しく笑うと頷いた。
「っ!!」
エースはその笑顔に顔を赤くする。
「初めて会った時より好きです。恋愛感情で言えば、クザンさんよりエースの方が好きです。なので、ごめんなさい」
○○は深く頭を下げた。
「…………俺が先にアプローチしてたら?」
クザンは小さく声を出した。
「…………もしもの話をするのは控えます」
○○は困ったように笑った。
「……そう」
クザンは頷くとエースに向き直る。
「泣かすなよ」
「泣かすかよ!」
エースは不機嫌にクザンを見た。
「誠意のある回答感謝する。じゃあ、仕事頑張ってな」
クザンは寂しげに笑うとそのまま立ち去った。
「っ!!○○!!!」
エースは○○に嬉しそうに抱き付いた。
「ど、どうしよう?!私、クビになるかな?!左遷かな?!」
○○は嬉しそうなエースの顔は目に入らずにおどおどとした。
「なら、警察なんか止めちまえ!俺が養ってやるからさ!」
エースは上機嫌のまま○○を抱き締めた。
「い、嫌よ!せっかく楽しくなってきたのに!」
○○はまだおろおろとしていた。
「大丈夫。あいつはそんな誠意の無い事しねェよ」
エースはギュッと○○を抱き締めた。
「……そ、そうよね」
「たぶんな」
「不安!」
○○は叫びそうになった。
「そんな事より!!」
エースは○○を間近で見た。
「俺とちゃんと結婚してください!」
エースが頭を下げて差し出したのはゼク○ィ。
「え?」
「結婚式挙げよう!派手に!」
エースはにかりと笑った。
年下の彼
「ってか、そんな重い本持ち歩いてたの?」
「マジで重かった」
「だろうね」
「でも!俺の気持ちは伝わっただろ?」
「…………生意気」
「なんだよそれ?!」
「うん」
「ん?」
「はい。こちらこそ宜しくお願いいたします」
「お、おぅ!こちらこそ宜しくお願いします」