年下の彼6
「いらっしゃ……い」
翌日の夕刻。
宣言通りにインターホンが鳴り、玄関ドアを開けるとエースがいた。
「よう!」
しかし、大荷物を抱えていた。
「なに?その荷物」
○○は眉間にシワを寄せながらもエースの荷物を指差す。
「結婚した癖に独身寮に住むなって追い出された!」
エースはにかりと笑った。
近隣住民に怪しまれそうだったので、○○はエースを部屋へと上げた。
「独身寮って、エース君は社会人だったの?」
大学生かと思っていたので○○は驚いた。
「ん?あァ。高校ん時からバイトしてた所で卒業と同時に働き出した。今は部長な」
エースは出された熱いお茶をふーふーと冷ましながら飲んだ。
「…………は?」
○○は目が点になった。
「ぶ、部長?部活じゃ無いわよね?」
「当たり前だろ」
エースは呆れながら言う。
「どこの会社?」
○○は呆然としながらも聞く。
「白ひげ」
「し、白ひげ?!」
ガタンっと音を立ててローテーブルに転けた。
「お、おい、大丈夫か?」
エースはあまりの○○の転けっぷりに驚いた。
「世界屈指の企業だけど?!そこの部長?!二十歳で!?どう言う事よ!!!」
○○は取り乱していた。
「…………実力主義だからな」
エースは引き気味に○○を見た。
「……あり得ないわ」
「嘘じゃねェよ」
エースは半笑いで頷いた。
「まァ、とにかく、俺は住む所がなくなっちまったから、宜しく頼む!」
エースはにかりと笑った。
「…………白ひげの部長なら部屋借りるくらいの金、即金で用意出来るでしょうに」
○○はじとっとした目でエースを見た。
「そうだけど、俺は○○と一緒に居てェからな!ちゃんと家賃とか払うしさ!」
エースは熱いお茶を飲み込んだ。
「………………部屋は別よ?」
○○はお客様用部屋を指差す。
「えー!俺は同じベッドで良い!」
エースは不満気に口を尖らせる。
「最近逮捕術で新しい技を入手したの!」
「……今は別の部屋で良い」
エースはため息混じりに頷いた。
「まず!一緒に生活するなら家事は分担制ね!」
○○は画用紙に線を引く。
「おう!」
エースは頷いた。
「朝のごみ捨ては私捨てられない日があるわ。泊まりだから」
○○はさっそくエースをにこりと見た。
「なら、俺がするか?」
「ありがとう!それから、ご飯は不規則だから作れる分からない」
「それは俺もだな。朝はパンとかで良いし」
「なら、買い物は私がするわ。大体3日分を買いだめする」
「了解」
「洗濯と掃除だけど、手の空いてる方がする?」
「……」
エースは腕組みをした。
「なァ。俺たち基本的に共働きの上に不規則だからこの表は役に立たねェんじゃないか?」
エースはきっぱりと言い切った。
「そう?」
「あァ。朝のごみ捨てと買い物は良いけど、それ以外は取り合えず手の空いたやつがする。どっちかに片寄り出したら相手にペナルティってのはどうだ?」
エースはニヤリと笑った。
「例えば?」
○○は身を乗り出した。
「俺が家事が出来ない状態になったら、金払ってクリーニング入れたり良い店に連れていって飯を食う」
「おぉ!それ良いね!」
「で、○○が家事を滞ったら体を差し出して貰う」
「…………何それ」
○○は片眉根を上げた。
「ギブアンドテイク。お互いに家事をやる気になるだろ?それなら」
ニヤリとエースは楽しそうに笑った。
「……」
「な?良い考えだろ?」
「……よし、わかった」
○○は考えながらも頷いた。
「よし!決まりな!俺も頑張って○○に触るぞ!」
「……なんかその言い方嫌ね」
○○は呆れたように笑った。