年下の彼5
「何してるの?」
○○は怒りを表しながらエースを睨んだ。
買ってきた惣菜と冷凍ご飯などで簡単に、しかし量のある夕食を取った後、エースは○○を床へ押し倒した。
「ん?夫婦の営み」
エースはニヤリと笑いながら答えた。
「…………」
○○はげんなりした顔をしてエースを見上げた。
近付いてきたエースの顔に遠慮なく拳を叩き込む。
「イッテェ!!!」
エースは驚いて鼻を押さえて○○から離れた。
「まったく、あんまり調子に乗ってるとお姉さん怒るよ?」
利き手を振りながにこりと○○は起き上がった。
「なっ!良いだろ!夫婦なんだから!」
エースは鼻を押さえたまま抗議した。
「夫婦だろうが何だろうが、許可なく押し倒すのはDVとして扱われます」
「夫を殴るのはDVじゃねェのかよ」
「何かおっしゃって?」
「…………いえ」
○○の迫力にエースは口をへの字にした。
「いーい?私たちは夫婦になったけど、それは仕方がなかったから!」
○○は指をエースに立てた。
「は?!じゃあ一生しねェとか言うのか?!」
さすがのエースも声を荒げる。
「そうは言ってないわよ。だから、これからちゃんと夫婦になりましょうって言ってるの!私もちゃんと努力するから」
○○は自分で言っていて可笑しいと思った。
「…………うーん?」
エースは○○の言葉を反芻した。
「なら、○○も俺の事が好きって事か?」
エースはピーンッと閃いたように言った。
「…………これからよ」
○○は困った顔をした。
「だから、無理矢理とか自分の気持ちを優先するんじゃなくて、相手の気持ちも考えて欲しいの」
○○は諭すように言う。
「……じゃあ、○○も俺の気持ちをちゃんと考えてくれよ?俺は○○が好きだし、手繋ぎてェし、抱き付きてェし、キスしてェ。セックスだっていっぱいしてェ」
エースは○○の目を見て口を開いた。
「…………わ、わかった」
あまりのストレートな言葉にクラクラしながらも○○は取り合えず頷いた。
「とにかく今はこれね」
○○はエースに握手を求めた。
「おう!宜しく頼む!」
エースはその手を取った。
「もし、無理矢理とかしたら」
「へ?イテェ!!!」
○○はにこりと笑って犯人確保の時の技を使う。
「ね?わかった?」
○○は優しくエースに聞いた。
「わかった!わかったから離せ!」
エースは○○から逃れると握られた手を振った。
「狂暴な女だ」
「警察官だもの」
○○の笑顔につられエースも笑った。
「まァ、俺も頑張るよ!」
エースはにかりと笑った。
「なァ、明日は休みだろ?」
エースは帰り際に○○を振り返る。
「えぇ。何事もなければ非番」
○○はエースを送るために玄関に来ていた。
「そっか。夕方来て良いか?」
「……良いよ」
エースの声に○○は頷いた。
何だか可愛らしくてときめいたのだ。
「そっか!じゃあ、明日来る!仕方ないから今日は帰る!じゃあな!」
エースはにかりと楽しそうに笑うと玄関から外に出た。
ーーパタン
閉まったドア。
静かな部屋に○○はもの寂しさを感じた。
「ふぅ、若い子に着いていくのも大変ね」
○○はそれに気を取られない様にわざと明るく声を出した。