年下の彼2
「ポートガス・D・エースです。以後宜しく」
睨むような真剣な顔で挨拶をしてきたのはどう見ても『少し』年下ではなかった。
あれから数日後。とある店を指定され行ってみると、ガープの隣には癖っ毛な黒髪にそばかすの目立つ青年が座っていた。
「エースだ!知り合いの預かり子だが、まァ、ワシの孫だ!!」
ガープは豪快に笑うとエースの背中を激しく叩いた。
「痛ェよ!!クソジジィ!!」
「なんじゃと!!!」
エースがガープを睨み付け、ガープはエースの頭に鉄拳を叩き込んだ。
「ちょ、ちょっとガープさん!それはさすがに……」
○○は驚きに固まったが、ハッと我に返りエースを庇うように声を出した。
「大丈夫じゃ!こやつを鍛えたのはワシだからな!!ぶわっはっはっ!!」
ガープはエースの頭を激しく叩きながら豪快に笑った。
周りの客も「なんだ、なんだ?」とチラチラと見た。
「と、とにかく子供相手にそれは」
「子供じゃねェ!成人もしてる!」
○○の思わず出た言葉にエースがそう否定の声を出した。
「そ、そっか、ごめんなさい」
○○が生意気そうなエースに頭を下げた。
「あー、まァ、とにかく!こいつなんていかがだ!?」
ガープはエースが自慢なのかニヤリと笑いながら聞いた。
「…………はぁ」
○○は生返事を返す。
ーーピルルルル
「失礼。ワシだ。…………解った、すぐに行く」
言葉少なくガープは真剣な顔をして携帯を切った。
「事件ですか?」
○○はすぐさま腰を上げる。
「あァ、今回は気にするな。金は払っておくから好きに食べてから帰りなさい」
ガープは着いて行こうとする○○を制して、にかりと笑うと店から出て行った。
「ジジィの金だから存分に食おう!」
エースはメニューを見ながら店員を呼んだ。
「えーっと、生大ジョッキ2つと盛り合わせ10人前!」
「じゅ、10?!」
○○は思わず叫ぶ。
「足りないか?」
「いや、大丈夫!」
○○は首を左右にぶんぶんと振った。
「そっか!後はごはん大盛り2つ!」
「いや!1つは普通で」
エースの言葉にぎょっとして慌てて店員に訂正した。
すぐに大きなジョッキにビールが2つ運ばれてきた。
「乾杯!!」
ガツンッと重たいジョッキが重なる音が響いた。
「……乾杯」
○○はため息混じりにビールを喉に流し込んだ。生ビールは乾いた喉にするすると入って行き、喉を潤した。
店員がごはんと焼肉10人前を持ってきた。
「焼くぞ!」
エースは着ていたスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを外し、ボタンをかなり開け、腕捲りをした。
それはまるで戦闘体制の様だった。
炭で焼く焼肉は甘い肉で美味しかった。
「美味しい!」
○○は思わず声を出す。
「だろ?!ここの肉最高だよな!高くてなかなか来れねェけどよ!」
肉を誉められたのが嬉しいのかエースはにかりと笑った。
その笑顔に○○の胸が疼く。
(いやいや、いくらタイプでもいくつ年下よ!無理無理!)
○○はパタパタと手を振った。
「ん?どうした?」
「いや、なんでも」
「ぐーぐー」
「って!寝るの?!…………ガープさんみたい」
○○はクスクスと笑いながらビールを煽った。