03
彼氏がいると解ってから急に馴れ馴れしくなったサッチに○○は戸惑いながらも着いて行く。
「オヤジー!連れて来たぞー!」
どうやら幹部用の食堂らしいそこは、高級レストランの様だった。
サッチの行く先の大きなテーブルには昨日会った大きな白ひげの男の他にも何人かが座っていた。
「グラララララ!よく来たな!」
白ひげは豪快に笑った。
「こちら、□□○○さん!彼氏持ち!」
サッチはやや芝居がかった口調で○○を紹介する。
「□□○○です。暴力は嫌いです」
○○は一応そこは言っておこうと頭を下げた。
「グラララララ!そうか!」
白ひげは豪快に笑った。
「こいつは現白ひげの社長、マルコ」
サッチの紹介に「よろしく」と言う男は○○を値踏みする様に眠たそうにしながらも鋭い視線を向けた。
(パイナップル)
○○は特徴的なマルコの頭を一発で覚えた。
「んで、第5支部長ビスタと第16支部長イゾウだ」
「ビスタだ」とひげが立派な紳士が笑い、女性より妖艶な男が「よろしくな」と笑った。
(……会長に社長に支部長……。怖い)
○○は怯えながら「宜しくお願いいたします」と頭を下げた。
「座って」
サッチに椅子を引いて貰い○○はドキドキしながら座った。
「さて、名前から聞かなきゃな」
「あ、はい!□□○○です」
白ひげに促され、○○は緊張しながら名前や住んでる所、出身校やこれまでの経歴などを聞く。
大学時代に頑張った事や何が今大切かなど、まるで就職の面接のようだった。
実際、面接なのだが。
「そう言やァ、何で殴ったんだい?」
イゾウが自分の拳で頬を殴る真似をする。
「……簡単に言うとセクハラされていたからです」
○○は簡潔に話す。
「何年も耐えていたのに?」
ビスタがひげをいじりながら聞く。
「……そうですね」
○○は頷いた。
「何か切っ掛けでもあったのかい?」
マルコは真剣な顔で先を促した。
「……こう言うと何なんですが、新しく入った正社員の女の子がセクハラを受けて辞めたいと言ってきたからです。私がもっと早くはっきりと拒絶を表していたら彼女にも被害がなかったのではないか?と思い始めたんです。「嫌」とは口にしながら、仕事が無くなるのを怖れてそれ以上何もしなかった私に非があると思いました」
○○は少し考えてからしっかりと声を出した。
「そりゃ、その男が悪ィだろうよ。まァ、それでオメェさんを辞めさせる会社はそれだけって事だ!」
グラララララと白ひげは豪快に笑った。
「お待たせー!」
サッチがワゴンを押しながらやって来た。美味しそうな香りが食堂を満たし、腹が鳴りそうになる。
「遅ェぞ」
イゾウが軽く避難する。
「悪い、悪い!」
サッチが笑いながら皿を配る。
「ん?今日は和食とか言ってなかったか?」
ビスタが盛られた料理を不思議そうに見た。
それは、和食とはほど遠いフォークで食べられる物だった。
「お前、良いだろ?箸でチマチマ食うより、ガバッと食え!ガバッと!!」
サッチの言葉に○○はピンっと来た。
自分の利き腕は捻挫をして上手く箸を扱う自信はなかった。
「す、すみません」
○○がこそりと頭を下げると「良い、良い!」とサッチはにかりと笑った。
「で?採用?」
サッチは白ひげとマルコを見た。
「まァ、良いんじゃねェか?俺は自分の意見が言える女は好きだ」
白ひげはニヤリと笑った。
「で、どこに行く?雑用が欲しい奴」
マルコの言葉にイゾウとサッチが手を挙げる。
「ビスタは?」
マルコがビスタを見る。
「俺は即戦力が欲しいから今回はいい」
ビスタは紳士的な声を出した。
「俺はコピー取りと茶くみが欲しい」
イゾウは正直過ぎる声を出す。
「俺は癒しが欲しい!」
サッチはハイハイ!と手を挙げる。
「…………取り合えずはイゾウの下に付かせるか」
マルコはため息混じりに○○を見た。
「□□だったな。採用だ。まずは雑用から始めろい」
マルコはイゾウを親指で指しながら言った。
「え?い、良いんですか?」
○○は驚いて声を出した。
「雑用はいやかよい?」
マルコはニヤリと笑った。
「いえ!喜んでさせて頂きます!!」
○○は椅子から立ち上がる。
「宜しくお願いいたします!!」
○○は勢いよく頭を下げた。
「宜しく頼むよ」
イゾウは妖艶な笑みを浮かべた。
「グラララララ!新しい家族が増えた所で食事だ!腹が減っては戦が出来ぬってな!!」
白ひげは豪快に笑うとサッチに目配せをして食事の支度を終わらせた。
白ひげの乾杯の音頭に合わせて食事が始まる。
「っ!!!なにこれ!美味しい!!」
思わず叫んだ○○にその場が一瞬シンッとする。
「う、すみませ」
「ぶふっ!!面白れェ!!」
サッチが堪らず吹き出した。
「くくく、笑かしやがる」
イゾウも口許を押さえて笑った。
「素直なのは良い事ではないか」
ビスタもくくくと喉をならす。
「まったく、オヤジ大丈夫か?」
マルコは呆れた様に白ひげを見上げた。
「グラララララ!馬鹿野郎!俺の息子には食事中に寝ちまう奴もいるじゃねェか!!」
白ひげは豪快に笑った。
○○は恥ずかしさに顔を真っ赤にしながらも食事を進めた。
利き手を捻挫していてもフォーク一本で食べやすかった。
「イゾウ部長、これから宜しくお願いいたします!」
「俺は厳しいぞ」
「は、はい!(笑顔が怖い)」
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