もしも、海賊で「愛しい時間」
「サッチ隊長ー!」
○○は満面の笑みを浮かべて食堂にいるサッチに近付いた。
「おう、○○ちゃん!仕事終わった?」
サッチも○○に笑顔で反応する。
サッチは愛しい恋人との一時を待ち望んでいた。
「はい!ステファンのご飯下さい!」
しかし、サッチの愛しい恋人は他に夢中だった。
「ステファン!サッチ隊長のご飯美味しい?」
「ワン!」
「そっか!良かったね!」
○○は嬉しそうに白い犬ーーステファンを撫でた。
「…………」
サッチはじとっとした目で○○とステファンを見ている。
「ふふ、食べた?じゃあブラッシングしよう!」
○○はブラシを持ちステファンに詰め寄る。
「何見てんだい?」
イゾウがサッチの隣にやって来た。
「あぁ!○○ステファン好きだよね!」
ハルタもニヤニヤと笑った。
「だーっ!あれは構いすぎだ!」
サッチは大声で叫んだ。
「『俺も構え』って?」
イゾウはにたりと笑った。
「そう!その通り!」
サッチはどんっ!と胸を張った。
「このオッサンキモーイ!」
「酷っ!」
ケラケラと笑うハルタにサッチはキーッ!とハンカチを噛む真似をする。
「良いじゃねェか。ステファンの世話もクルーの仕事だ」
イゾウはクスクスと笑いながらキセルを吹かした。
「だけどよー!最近せっかく早く終わってもイチャイチャ出来ねェ!!」
「あ!サッチに飽きたんじゃない?」
サッチの愚痴にハルタがポンッと手を叩いた。
「あ?」
「そうかもねェ。最近隊の奴等といても周りとステファン話に花咲かせてるみてェだしな」
イゾウはくすりと妖艶に笑うと紫煙を吐き出した。
「…………」
サッチは黙って○○を見る。
「あはは!ステファン綺麗になったよー!あっ!くすぐったいよー!止めてよー!」
クスクスと楽しそうに笑いながら犬に舐められる我が恋人を見てサッチはプツンと切れた。
「サッチどこいくの?」
○○の方へと歩いて行くサッチをハルタは不思議そうに、イゾウはニヤニヤしながら見届ける。
「あ!サッチ隊長!今ステファンがっ!え?!」
サッチは嬉しそうにステファンの話題を口にする○○を、無言で肩に担いだ。
「おい、イゾウ」
「なんだい?」
少し怒気を孕んだサッチの声にニヤリと笑って答えるイゾウ。
「お前んとこの隊の雑用が一人減っても良いな?」
「え?サッチ隊長?」
地を這う様なサッチの低い声に戸惑う○○。
「あァ。良いさ」
イゾウは妖艶に笑ってキセルを吹かした。
サッチは○○を担いだまま船内へ入って行った。
「明日は使いもんにならねェなァ」
イゾウはクスクスと楽しそうに笑った。
「○○可哀想ー」
ハルタは「あーぁ」と息を吐いた。
どさりとベッドに落とされ、サッチに馬乗りにされる○○。
「ど、どうしたの?サッチ隊長?」
「俺はお前の隊長か?」
恐ろしい笑顔のサッチに○○は冷や汗を体全身に感じた。
そこで○○はようやくとても不味い事になっていると悟った。
「え?サッチさん!どうしたの?!」
○○はおどおどとサッチを見上げる。
「お前、良くも恋人である俺の目の前で他の男に舐められやがって」
「そ!そんな身に覚えもない!」
○○はサッチの言葉を即座に否定する。
「何言ってやがる!さっきだ!つい今さっき!」
サッチはイライラと叫ぶ。
「……?……?!」
○○は必死に思いを巡らすが全く記憶にない。
「ステファンだ」
「犬じゃないですかぁ!!!」
サッチの声に思いきり叫んだ。
「犬だろうと何だろうと雄は雄だろ?」
サッチはゆらりと怖い雰囲気のまま○○に顔を近付ける。
「…………私にとっての『男』はサッチさんだけですよ?」
○○はじっとサッチを見上げる。
「それに、それを言うならサッチさんだっていつもナースの姐さん達にベタベタベタベタ」
○○は不機嫌そうに唇を突き出した。
「え??いや!それは、そのー、あれだ?」
「どれ?」
「いや、だからな?その」
あっという間に形勢は逆転していた。
「まぁ?私だけを愛してくれるなら許してあげようかしら?」
○○はくすりと妖艶に笑うとサッチの首に自分の腕を絡め、抱き寄せた。
「あァ、それなら問題ねェな」
サッチはニヤリと笑うと○○をベッドへと沈めた。
「お騒がせバカップル」
「サッチの愛って軽そうに見えて重たそうだよね!」
「しかも粘ってやがるから質が悪ィな」
「あはは!確かに!」
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