その後の時間5
※上品でない表現を含みます。苦手な方はご注意ください。
「おはようございます!」
○○は朝なるべく早く来て、花瓶の水を変えて、としたいのだが、残念ながら、サッチのせいでそうはいかなかった。
「お!今日もイゾウ部長よりは早いよ!」
そう16支部の仲間にいじられる事が多い。
「く、クビにはなりたくないですから!」
○○は慌ててパタパタと手を振った。
「何してんだ?お前ェら」
イゾウが朝から艶っぽい姿で現れた。
「イゾウ部長、朝から目の毒ですね、なんか……」
○○は冷や汗を滴ながら言う。
「……ヘェ、俺に見惚れてたら泣くぜ?あいつ」
にたりとイゾウが楽しそうに笑った。
「いや、見惚れて無いので大丈夫です!」
○○はきっぱりと言い切った。
「そうかい。あァ、そうだ来週」
○○は資料室でイゾウに言われた物を探していた。
紙が劣化しない様に窓のない室内は頼りない蛍光灯の光で薄暗かった。
「えーっと『2006年の総会議資料』はーっと、あ!あった!」
○○が資料を手に取るとカチャリと誰かが入ってきた。
どうやら2人連れの様だ。
「え?まずくない?」
「良いじゃない!」
尻込みする男とクスクスと笑う女の声。
「いや、誰か来たら……」
「あら、それが良いんじゃない」
ちらりと覗くと2人が口付けているのが見えた。
(う、うわぁぁ!!!)
○○は真っ赤になって、ちらちらと覗く。
乗り気では無かった男の方もするりと女のスカートを捲り上げ始めた。
(え?え?ちょ、え?ど、どうしよう?!)
○○はその場に座り込んで耳を塞いで目をギュッと閉じた。
出るに出れなくなり、小一時間その場で踞っていた。
「ふふ、じゃあ、またね」
女はクスリと笑うと資料室を出て行った。
男も少ししてから部屋の明かりを消して外に出た、そして
ーーカチャリ
(え?)
鍵のかかる音がした。
○○は慌ててドアに近付いてカチャカチャとやるが、開かない。
「ちょっ、ちょっと!」
○○は手探りで電気をつけた。
「あ、開かない!」
明るくしてから鍵を開けようと試みるが、内側からは固くて開かなかった。
「え?ちょっ!やだ!開けてよ!」
どんどん!と叩くが全く人が通る気配もない。
「えー!やだやだ!イゾウ部長に怒られる!あ、誰かに!」
慌てて携帯を取り出す。
「えっと、やっぱり!」
○○は迷わず通話ボタンを押した。
「えー、○○ちゃん何でいないんだよー」
サッチが休憩を利用して16支部に遊びに来ていた。
「資料を取りに行かせたんだが、まだ帰って来ねェな」
イゾウは「何やってんだ」とため息をついた。
「行ってみっか!」
サッチはニヤリと笑った。
「テメェ、仕事中に妙な気起こすんじゃねェよ」
イゾウはギロリとサッチを睨み付けた。
ーーピルルル
「お!噂をすれば!もしもーし!」
サッチは嬉しそうに携帯を通話にした。
『たす、けてー!サッチさーん!』
えーんと言う泣き声と共に助けを求める○○の声。
「っ?!資料室か?」
『うん!早く!』
「待ってろ!」
叫ぶように言うとサッチはその場を駆け出した。
ーーガチャ、ガチャガチャ!
「大丈夫か!」
サッチは資料室のドアを開けるとその場に踞る○○を見た。
「うう!サッチぃぃ!!!」
○○はサッチに泣きながら抱き付いた。
「お、おぉ。よしよし」
サッチは○○の頭を優しく撫でた。
「そう言えば」
サッチはにやりと笑った。
「ここさ、ヤる人いるらしいぜ?」
サッチが意地悪く囁いた。
「っ!!!」
○○はサッチを睨み付けて思い切り殴った。
それは、初めて会った時の様な見事なものだった。
「…………サッチ、良い男になったなァ」
「うぅ、イゾウ部長!サッチ部長酷いんです!」
「……あァ、何となくわかる」
「いやいや!俺まだ何もしてないよ!」
「『まだ』ねェ」
「サッチ部長最低だ!!」
「え?え!?ちょっ!」
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