その後の時間4
会社のシステム上、夜の電源を全部切らなくてはいけない日。
仕事がいつもよりだいぶ早く終わったので、サッチと○○はデパートに新しい食器を見に来ていた。
「わぁ!この和皿可愛い!」
○○は一枚の皿を手に取った。
「桜にうさぎねェ」
サッチは今一つ乗り気では無いようだ。
「ダメ?」
「うーん。少し可愛過ぎやしねェか?」
サッチは○○の手の中の皿を覗き込んだ。
「そっか……じゃあ、止める」
○○は残念そうに皿を置いた。
「じゃあさ、こっちは?桜だけだけど鮮やか!手触りも良い!これなら和風パスタも合いそうだ!」
サッチは似たようだが、うさぎのついていない柄を進める。
「うー、うん!これ可愛い!」
○○は気に入ったのか、嬉しそうに頷いた。
「後は茶碗とかだな。やっぱり夫婦茶碗だな!」
サッチはニヤニヤとお揃いの茶碗を手に取った。
「わ、割れた時ショックだよね」
○○は照れ隠しに言う。
「割るなよな」
「サッチさんこそ!」
2人は新生活のための食器を粗方揃えた。
「あれ?サッチさん?」
○○はまたかと思いそちらを向いた。
しかし、今までの女達より上品に感じた。そして、どこかで見た気がしたのだ。
「あら!真琴ちゃんじゃない!久し振り!」
サッチは嬉しそうに女ーー真琴に話しかけた。
「お買い物?あ!そちらが!」
真琴は嬉しそうに○○を見た。
「そうそう。俺の彼女の○○。○○、こちらマルコの奥さんの真琴ちゃん」
サッチの説明に○○は驚いた。
「っあ!せ、先輩!真琴先輩ですよね?ーー高校の!え?マルコ社長の奥さん?」
○○は驚いて声を出して、混乱していた。
「え?…………あっ!□□さん?」
真琴はじっと○○を見てから思い出した様に手を打った。
「そうです!そうです!お久し振りです!」
○○は嬉しそうに笑った。
「あらら、知り合いだったの?世間って狭いね」
サッチはケラケラと笑った。
「はい!同じ高校で憧れの先輩です!」
○○は嬉しそうにサッチを見上げた。
「いや、憧れだなんて」
真琴は恥ずかしそうに顔を赤くした。
「いやいや、告白数は数知れず!隠れファンクラブやストーカーもいたと噂の!」
「ヘェーさすがだねい」
「っひぃっ!!!!」
○○の後ろで声がしたと思うとマルコが立っていた。
「ちょっとマルコ、うちの○○ちゃん虐めないでくれる?」
サッチは呆れながら自分の後ろに隠れた○○をちらりと見てからマルコに言った。
「そんなに告白されてたのかよい」
「え?さ、されてないですって!」
真琴は慌てて手を振った。
「ヘェ、そうかい」
マルコは目を細めた。真琴は背中に冷や汗を感じた。
「そう言えばこの2人、真琴ちゃんが高校生の時会ってるんだって」
サッチが○○にこっそりと説明する。
「え?どんな出会いなんですか?」
○○はワクワクと聞く。
「それがね、マルコが定期券を落として、真琴ちゃんが拾ったって言う」
「サッチ、テメェ」
マルコがサッチを止めようと睨み付ける。
「あ、あァ!その話知ってます!」
「「は?」」
「え?」
サッチ、マルコ、真琴が固まる。
「ほら、先輩言ってましたよ!定期券拾ってあげた怖そうなおじさんの話」
「おじさん!」
ぶふっとサッチが笑いをこらえた。
「え?私言った?」
「はい!話してくれましたよ!」
記憶にない真琴と覚えている○○。
「そっかぁ。えー!何か運命的ですね!羨ましい!」
○○は楽しそうに笑った。
「ところで社長」
「なんだよい」
「先輩の高校生時代の写真は欲しくないですか?」
「…………」
「先輩がもってない様な物もありますよ!」
「…………何が望みだ」
「の、望みだなんて!」
「…………ボーナスに色付けてやるよい」
「お持ちいたします!」
「○○ちゃん悪どい!」
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