その後の時間
「ただいまー」
○○は靴を脱ぎながら帰ってきた事を伝える。
「おう!お帰り!飯出来てるぞ!」
サッチがキッチンからひょいと顔を覗かせた。
「わーい!良い匂い!」
○○は嬉しそうにサッチを追ってキッチンへと入った。
「今日は春巻きだ!手洗って来い!」
「はーい!」
サッチに言われ○○は洗面所へと足を向けた。
「カリカリジューシー!」
○○ははふはふと揚げたての春巻きを口に運んだ。
「旨いか?」
「うん!凄く美味しい!」
○○は嬉しそうに頷いた。
「そう言や、何してきたんだ?」
サッチは春巻きをケチャップに付けた。
今日は仕事帰りに寄りたい所があるからと、サッチは一人で先に帰ってきたのだ。
「うん。…………実は…………」
○○は言い難そうにそろりと紙袋をテーブルに乗せた。
「ん?なんだこれ?」
サッチはカリっと春巻きを噛んだ。
「サッチさんへのプレゼント」
○○は困った顔で紙袋から小さな箱を3つ取り出した。
「3つ?」
「うん。気に入ったの有ったら使って欲しいんだけど……」
○○はどうぞと3つの箱をサッチへと差し出した。
「開けて良い?」
「……う、うん」
○○は困った顔のまま頷いた。
「お!キーケース!」
ひとつめに開けた箱には皮で茶色のシックなキーケースだった。
「?キーホルダー?」
次に開けたのは金属製のカッコイイキーホルダーだった。
そして、
「あはははははは!!なんだこれ?!」
最後に開けたのはビールのオモチャが付いたキーホルダーだった。
「あ、これね振ると泡立つの」
○○はビールのオモチャを振る。
「あ!ホントだ!可笑しー!!」
サッチはケラケラと笑った。
「しかし、3つともキーホルダーって」
サッチは楽しそうに笑った。
「…………い、今サッチさんが車のキーに付けてる奴より良いのは無いかもしれないけど、出来たら使って欲しいなぁ…………なんて」
○○は自分が図々しいお願いをしている感覚がありながら言葉を発した。
「あ!あー!なるほどな!」
サッチはご飯を食べ終わると席を立った。
いつもの場所にかけてある車のキーを持って再び席に座る。
「どれにするかな。どれが似合うかしら?」
うふっとサッチは笑った。
車のキーから前に使っていたキーホルダーがあっさりと取られた。
「え?えーっと、やっぱりキーケースのがオススメかな?」
○○は戸惑いながら自分の好きな物を進める。
「よし!ならこれをっと!おっ!良いじゃねェか!」
サッチは新しいキーケースに嬉しそうに笑った。
「…………い、良いの?」
「ん?」
「大切な物だったんでしょ?」
○○はちらりと外されたキーホルダーを見る。
「何言ってんの?今一番大切なのは○○ちゃんに決まってるじゃない!」
「やーねー!」とサッチは気持ち悪く笑った。
「サッチさん」
「ん?」
「ノーチェンで!」
「当たり前だろ!」
「ありがとうございます!」
「よーし!お礼に頑張っちゃうよ!今夜!」
「え……いや、それは、ちょっと」
「遠慮するなって!」
「無理!死ぬー!!」
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