24

海岸沿いの公園に連れて来られた。
車を降りると近くの時計が見えるベンチに座らせられた。

「ねぇ、何考えてるの?」

電話を切った元彼氏に聞いた。

「お前がさ、俺を頼ってればこんな面倒な事にならなかったんだろ?」

元彼氏はため息混じりに○○の隣に座った。

「……顔も見たくないって言ったのは貴方でしょ」

○○は元彼氏の顔を見ながら聞く。

「……悪かったよ。あの時はどうかしてたんだ。それに、ちゃんと働いてたんだな」

「……うん」

○○はしっかりと頷いた。

「さっきの奴、白ひげの部長だろ?お前遊ばれてるよ」

元彼氏はため息をついた。

「白ひげってのはさ、トップの白ひげ、あー今は会長か、で副社長とか、専務とかは名ばかりで部長は等しいんだとよ。だから、そんな地位も名誉もある男がお前なんか本当に相手にする訳ねェだろ」

元彼氏が大袈裟に肩を落とした。

「……解ってるよ。サッチさんが好きなのは凄く綺麗な女の人だもん」

○○は素子の顔を思い浮かべた。

「じゃあ、やっぱり金か」

元彼氏は苛立たし気に言う。

「……ううん。本当に私はサッチさんの側にいたいだけ」

○○は小さいがしっかり声を出した。

「あいつが他の女を好きでもか?」

「…………うん」

「…………」

元彼氏は黙り込んだ。

「俺はさ、○○が好きだ。結婚したい」

元彼氏はしっかり声を出した。

「……ありがとう。でも、私は貴方とは一緒にいられない」

○○は小さく声を出した。

「でもさ、もうすぐ15分だ。走ってきても間に合うのにな」

元彼氏は時計を見上げた。










サッチは4支部を駆け出し、エレベーターのボタンを乱暴に押した。

「ったく!早く来い!」

サッチはイライラとしていた。

エレベーターが来ると乗り込む。

「よう、サッチ。お前仕事はどうしたよい?」

中にいたのはマルコだった。

「あ?今はそれどころじゃねェよ!」

サッチはマルコを睨み付ける。

「落ち着けってんだよい」

マルコはサッチの肩を叩く。

「あァ?!これが落ち着いていられるか!○○ちゃんの元カレがあいつを拐ったんだよ。無茶な事させんなよ!あいつは!」

サッチが叫ぶとエレベーターは一階に着く。

「じゃあ、今日は残業だねい」

マルコはにやりとサッチに笑う。

「ふざけんな!今日はあいつに指輪買ってやる約束だから無理!」

サッチは叫びながらモビーから飛び出して行った。

「はっ!やっと本気になったのかよい」

マルコは見えなくなったサッチに楽しそうに笑った。






外に出てから車で行けば良かったと思ったが、戻る時間も惜しくてサッチは走り続けた。
サッチの足なら10分で着く。
車より行きやすい場所だ。

路地に入ると行き先を塞ぐように男達がいた。

「やあやあ、この前はどうも」

男がニヤニヤとサッチを見た。

「お前ら確か……」

サッチはその男達に見覚えがあった。
○○の事を執拗に追っていた男達だ。

「今回は邪魔しないで欲しいね」

男は笑った。

「今回は?お前ら、まさか○○ちゃんの元カレの仲間?」

サッチは声に出して聞いた。

「さあね?でも、用もない女をそんなに追いかけるか?」

ニヤニヤと笑う男。

「ったく、根性腐った男みたいだね、どうも」

サッチはげんなりとした顔をした。

「とにかくさ、20分くらい遊んでようぜ?」

男達は手に鉄パイプや金属バット等を持ってサッチに近付く。

「嫌だよ。俺、急いでるし!!」

サッチは先手必勝とばかりに襲い来るそれらを凪ぎ払い、腹に拳を叩き込む。

「ぐはっ!」

「痛ぇ!!!」

「っ!!!」

男達はアッサリとのた打ち回った。

「な、何でそなに強ェのにこの前はやられっぱなしだったんだよ!」

男が悔しそうにサッチを睨み上げた。

「女の前で弱い者いじめなんてカッコ悪いだろ?」

サッチはにやりと笑った。

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