19
○○がサッチと暮らし始めて数ヵ月が過ぎた。
初めて白ひげで貰った給料の多さに驚いた。
「派遣の時は手取りで13万位でした!」
○○が給料明細を見て驚きながらサッチに言った。
「良かったな!ちゃんと貯金しろよ?」
サッチはよしよしと○○の頭を大きな手で撫でた。
「おい、□□これ」
イゾウが差し出してきた書類を○○はふらりとしながら受け取る。
「コピーですか?」
「……あァ。どうした?調子悪ィのか?」
イゾウは眉間にシワを寄せた。
「大丈夫ですよ!」
○○はにこりと笑った。
「あいつヤり過ぎだな」
イゾウはサッチの顔を思い浮かべながらため息をついた。
コピーを取りながら熱っぽく、ダルイ体を何とかしようと○○は気を張っていた。
ここ数日、異様にダルイのだ。熱が上がれば病院にも行くのだが、微熱あたりをうろうろしていた。
「んー。何だろう?病院とか面倒臭いしなぁ」
○○は「疲れてるのかな」と思いながらコピーを取り、そのまま冊子を作る作業をする。
雑用も慣れたもので、何とか仕事の効率も上がってきていた。
「っ、気持ち悪……」
吐き気が○○を襲った。
「何だろう。……やっぱり医者行っとこうかな?」
○○はふらふらとしながらイゾウに出来た冊子を渡す。
「っ!!」
それは昼休みにやって来た食堂での事。
食堂のドアを開いて中の匂いを嗅いだ瞬間、気持ち悪くなり、○○は吐き気に襲われた。
「え?○○ちゃん大丈夫?」
同じ支部の仲間たちが「どうした?どうした?」と○○を囲んだ。
「お前、早退して医者に行け」
イゾウはため息混じりに言う。
「でも」
「こんな所で吐かれても迷惑だろ?」
言葉とは裏腹にイゾウの表情は優しかった。心配しているようだ。
「サッチには俺から連絡しておいてやるから」
「…………はい」
イゾウに頭を下げて、○○は帰る事にした。
「□□さん、お入りくださーい」
看護婦に呼ばれ、診察室に入る。
白ひげ御用達の病院は会社の近くだった。
「尿検査ね、少し汚れてるみたいだな。腎臓かねェ?服めくって」
言われるがまま服を捲る。聴診器が冷たかった。
「…………うーん。微熱続きで気持ち悪いねェ。あのさ、生理来てる?」
「え?えーっと」
そう言えばいつだったかと思いを巡らす。サッチの家に来てから一度しか来てない気がする。
「薬は風邪用をだすけど、婦人科、もしくは産婦人科の受診を薦めるよ」
「は?」
医者の言葉に○○は目を白黒させた。
「ただの風邪ならそれでよし!妊娠してたら、まぁ、また別の問題だからな」
医者はうーん。とペンで頭をかいた。
「と、言うわけでお大事に」
○○はボーッとしながら道を歩く。
「……にんし……」
考えてもみなかった。○○は悩みながらテクテクと歩いた。
「サッチさんは……」
ーー喜んでくれるのか?
ーーそれとも
○○は医者に貰った紹介状と薬を握り締めた。
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