17
※18禁とまでは行かないかも知れませんが、苦手な方はご注意下さい。
○○にはサッチと言う男が分からなかった。
見た目はゴツくて怖い。中身はチャライ女好きと言うのはあっていると思う。
何のために自分を部屋に置いたのか最初の内は分からなかった。
だが、サッチが○○に手を出して「やはり」と思った。
「可愛い」とは言われるが「好き」や「愛してる」と言う言葉は無く、やはりただ抱ける女が欲しいのだと○○は理解していた。
「受け入れる」と言ったのは自分である。
その時にはすでに○○はサッチの事が好きだった。
いや、あの時。
助けを呼ぶために電話をした時から○○はサッチに恋をしていたのだ。
正直、○○はサッチに抱かれるだけの都合の良い女でも良いと思っていた。
しかし、「その為の同居」と言われて強い衝撃を受けた。その場から逃げるようにキッチンへ入り、サッチの言葉は耳には入らなかった。
「ここが○○ちゃんのアパートか」
サッチは車を降りるとアパートを見上げた。
「今の時間ならあの人もいないと思います」
○○はそう言うと合鍵を取り出した。
玄関まで向かい、鍵を開ける。
カチャリと言う音に心臓が嫌な音を立てる。
(もし、もし、彼がいて、また酷い言葉を投げ掛けられたら……)
○○は恐怖で心臓が押し潰されそうになった。
「大丈夫」
「っ!サッチさん」
ドアノブを握ったままの手にサッチの手が重なった。
「大丈夫だから!サッチ様が一緒にいてやるからさ!」
サッチのにかりと笑う笑顔にホッとしながらドアノブを回した。
ギーッと鳴るドアを全開にする。中にはもちろん人気はなかった。
「部屋はそのままだ。片付けちゃいますね!」
○○はホッとして自分の旅行用鞄に残った自分の物を詰めていく。
サッチは部屋に入るとキョロリと部屋を見回した。
「ふーん」
サッチはそれだけ声を出した。
「お待たせしました」
何とか鞄に詰め込むと部屋を見渡した。
自分の物が無くなった部屋はがらんとした様だ。
「……」
「ほんじゃ、行こうか」
「……」
「○○ちゃん?」
サッチは部屋に佇む○○を振り返る。
「……私は一体何だったんでしょう」
○○はぽつりと小さく呟いた。
「……行こう」
サッチは○○の手から荷物を奪うと部屋から○○を連れ出した。
「……さようなら」
○○は合鍵でドアに鍵をかけると郵便受けに鍵を入れた。
「さて、次はどうする?必要な物を買うとか言ってたけど」
「ーーてください」
「ん?」
車の運転席から助手席に座る○○の小さな声を聞き取ろうとサッチは体を傾けた。
「キス、してください」
○○はうつ向いたままぽつりと呟いた。
顔は無表情だが、寂しげでサッチを見ていなかった。
「……」
サッチは身を乗り出して触れるだけの口付けを送る。
「……もっと」
○○の声に惹き付けられる様にサッチは○○の息すら奪うような深い口付けをした。
「○○ちゃん」
サッチは○○の名を呼びながら角度を変えて何度も口付ける。
「……抱いて欲しいです」
自分が存在しているのか確かめたい。○○は自分が何のためにいるのかよく解らなくなっていた。
あんなに優しかった彼氏の豹変ぶり。
好きになったサッチからは体しか求められていない。
そんな思いが○○の心臓を鷲掴みにしていた。
「ん、はっ」
昼間だがカーテンを引いた薄暗い部屋で2人の影は重なっていた。
「もっと」
「ん?」
「もう、壊れても良いです」
○○の言葉は冷たくサッチの胸に突き刺さるが、その顔は妖艶に見え、サッチの胸を高鳴らせた。
「くっ、女には優しくするのがサッチさんなんだけど?」
余裕もない癖におどけて見せる自分にサッチは小さく笑った。
「……はっ、」
○○がサッチの動きに合わせて息を飲む。
サッチは深く彼女に溺れる感覚を味わっていた。
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