プロローグ
諦めるなんてつかない
あいつが結婚して、俺のものになるのなんてあり得なくて
それでも見てしまう
それでも他の女を見る俺は
本当に最低だと思う
真っ白な白無垢を着て、アパートから和傘に差されて出てきたあいつーー素子はこの世のモノでは無いほど美しかった。
(なんの変鉄もないアパートってのが何とも締まらねェが)
真っ白な着物に真っ白な化粧。
傘と口紅だけが紅くて美しい。
素子がサッチを見付けた。
仲人役なのか、付き添っていた幸子がそれに気付き素子の前に出た。
だが素子はそれを制した。
「来てくれたの?サッチ」
彼女は美しい笑顔をサッチに向けた。
「あァ…………いや、俺は忙しいから式には出れねェ」
元彼であるサッチは苦笑した。
「そう」
「そりゃそうだよ。白ひげのトップ2を呼んじまうから、会社はサッチ様がやるしかないだろ?」
ニヤリと笑うサッチに素子は「相変わらずね」と笑った。
「あいつに泣かされる様な事があったらこのサッチ兄さんに言えよ?大切な妹の仇は取ってやる」
サッチが胸を張ると「ありがとう」と素子は笑った。
「じゃ、俺は行くぜ」
サッチは素子に背を向ける。
「サッチ!」
素子の呼び掛けにサッチは振り返らずに立ち止まる。
「幸せになってね」
素子の顔は今にも泣き出しそうであったが、サッチは背を向けたまま手だけを振った。
女は可愛い
だが、お前ほど愛しいと思える女は現れないと思った
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