15
「お、終わったー……」
○○は就業時間を迎えてデスクに突っ伏した。
いつもいつも雑用ばかりであるが、かなり忙しい。
それでも○○は働く喜びを感じていた。
「お疲れィ」
イゾウがキセル片手に声を掛ける。
「お疲れ様です!あ、まだ何かやる事あるんですか?」
○○がイゾウに聞く。
「あァ。残業までは行かないけどな」
イゾウは面倒だとため息をついた。
「あ、じゃあ私も出来る事があれば!」
「いや、帰れ」
イゾウは○○の申し出をシッシッと手で払う。
「あそこで隠れてるらしい木偶の坊を回収して帰れ」
「は?」
イゾウがキセルで指す方に目を向ける。
「…………さ?何故」
○○は驚きながら柱に隠れているらしい(バレバレ)なサッチを見た。
「鬱陶しいから早くしろ」
イゾウはニヤリと笑いながら手を払った。
「あ、あれはイゾウ部長に用があるんじゃ?」
○○は恐る恐る声をひそめる。
「あ?俺に用ならとっくにここまで来てるだろ。つべこべ言わず早く行け」
イゾウは苛立たし気に声を出した。
「……そ、そうですか。では、お疲れ様でした」
○○は仕方なくイゾウに頭を下げた。
○○は自分の鞄を持つと立ち上がる。
「お疲れ様でした」
○○が部屋を出る前に挨拶をする。
「お疲れさーん」などなど声が返って来た。
○○が柱に隠れているサッチをちらりと見るとこちらを見ているのが解って慌てて目を反らせた。
「お、お疲れ様でした」
○○は足早にサッチの前を通り過ぎる。
「……」
サッチは無言で○○の後ろについた。
(ひぃぃ、無言とか何か凄く怖い!!)
○○は後ろからの圧力に泣きそうになった。
エレベーターホールには人がたくさんいてホッとする。
ーーチーン
やって来たエレベーターはすでに多くの人を乗せていた。
○○はそれに乗り込む。
壁際まで詰め込まれたが、不思議とキツくなかった。
(あ、サッチ部長)
よく見ると他の人から庇うように立つサッチの後ろ姿があった。
サッチは誰かと話している様だった。
「……」
○○は何だか胸がきゅんと狭くなった。
頭をサッチの背中にくっ付けた。
ーーチーン
一階に着いた音に目を開けてサッチの背から離れた。
そのまま出ようとサッチの背中から出ようとしたが、何故か動かずにそのままエレベーターは閉まった。
(は?え?)
サッチはまだ話している様だ。この下は幹部用駐車場しかないはずだ。
「では、また」
「あァ!お疲れさん!」
紳士的な後ろ姿はビスタだったようだ。
ビスタが充分離れてからエレベーターから降りるとサッチは○○の方を向いた。
「あのなァ」
サッチは大きくため息をついた。
「な、なんですか?」
○○は突然話しかけられ驚いた。
「いきなり可愛い事しないでくれる?そんなに襲われたいの?」
サッチはニヤリと笑いながら言った。
「は?!そんな訳ないじゃないですか!」
○○は自分からサッチの背に触れた事が異様に恥ずかしくなり怒るように声を荒げた。
「まァまァ!図星刺されたからって照れるなよ!」
ニヤニヤと維持悪くサッチは続ける。
「っ!!」
「痛ェ!!!」
悔しくてヒールで思いきりサッチの靴を踏んだ。
「つ、冷たいぞ!」
サッチは踞りながら○○を恨めしげに見上げた。
「オッサンの上目使いキツイ」
「声に出てるよ!」
サッチは思わず突っ込んだ。
「まァ、良いや。帰るぞ」
サッチは素早く立ち直ると○○の手を握って車に押し込んだ。
「先お風呂頂きました」
帰ってきてご飯を食べて○○は風呂から出てきた。
「おう、俺も入っちゃおー」
サッチは足取り軽く風呂場へ向かった。
機嫌の良いサッチは何なんだろうと思いながら○○は自分の部屋へと入る。
「明日は必要な物買いに行こう」
○○は目覚ましをセットすると電気を消して布団に入った。
すると、疲れていたのかすぐに睡魔に襲われた。
「…………ん?」
眠っていたはずなのに、息苦しさで目が覚めた。
「っ!サッチ部長?」
完全に覚めきっていない頭を無理矢理動かして目を開けるとサッチに組敷かれていた。
「何寝てんの?」
不機嫌そうにサッチは唇を尖らせた。
「…………いや、いやいやいやいや!」
○○はさすがに二晩続けては無いだろうと冷や汗をかいた。
「何その顔」
サッチはふて腐れた様な顔をした。
「え?あ、あの…………す、するん、ですか?」
○○はサッチから恥ずかしそうに顔を背けた。
「うん、する」
にたりと笑うとサッチは○○の唇を奪った。
「んっは……も、……無理」
「なーに言ってんの!夜はまだまだこれからだぜ?」
「は?!いや、本当に無理で」
「大丈夫!ちゃんと気持ち良くさせてあ・げ・る!!」
「む、むりですー!!!」
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